「有足字(ゆうそくじ)」は、チベット文字の中でも初心者がつまずきやすい発音ルールのひとつです。
特に「後置字」を覚えた後に出てくるため、ここで混乱する人が多いポイントでもあります。
この記事では、有足字の意味・形の特徴・発音ルールを、初心者向けにわかりやすく解説します。
前回の発音講座(後置字)
そもそも「有足字(ゆうそくじ)」って何?
「基字」の下に置く文字
チベット文字では、中心となる子音を「基字」と呼びます。
有足字は、チベット文字の基字の“下側”に付く文字ですよ!
ヨコではなくタテ方向に組み合わさるのが特徴だゾ~
4通りの発音の基本ルール
有足字は、基字の下にどの文字が付くかで発音が変わります。
基本的な対応は以下の通りですよ~
- Y系の有足字 → ヤ行の音に変化する
- R系の有足字 → タ行・ラ行に影響し、元の音が変化する
- L系の有足字 → ラ行の音になる
- W系の有足字 → 教材によって「発音は変わらない」と説明されることもある
↑これはあくまでも基本ルールね!
※実際の単語では例外が発生する場合があります。
Y系の有足字
Y系の有足字が付くと、どう発音が変わるのか?
例えば、基字
ཀˉka (カ)
にY系の有足字がくっつくと
ཀྱˉkya (キャ)
基字の下の
ྱ
がY系の有足字です。
Y系の有足字が付くことで「ヤ行の音(yの音)」が加わり、
同時に子音の発音もやや変化します。
Y系の有足字一覧
Y系の有足字は8種類あります。
基字ごとに発音変化のパターンが決まっています。
| 基字(元の音) | 読み(基音) | Y系を付けた形 | 読み(変化後) |
|---|---|---|---|
| ཀ | ˉka(カ) | ཀྱ་ | ˉkya(キャ) |
| ཁ | ˉkʰa(カ) | ཁྱ | ˉkyʰa(キャ) |
| ག | ˊkʰa(カ) | གྱ | ˊkya(キャ) |
| པ | ˉpa(パ) | པྱ་ | ˉtya(チャ) |
| ཕ | ˉpʰa(パ) | ཕྱ་ | ˉtyʰa(チャ) |
| བ | ˊpʰa(パ) | བྱ་ | ˊtyʰa(チャ) |
| མ | ˊma(マ) | མྱ | ˊnya(ニャ) |
| ཧ | ˉha(ハ) | ཧྱ | ˉhya(ヒャ) |
Y系の有足字を使った単語例
ཁྱུ། ˉkyhu(キュ)
群れ
མྱུ་གུ། ˊnyuku(ニュク)
新芽
གྱང་། ˊkyhaŋ,ˊkyhaN(キャン)
塀
R系の有足字
R系の有足字が付くと、どう発音が変わるのか?
例えば、基字
ཀˉka (カ)
にR系の有足字がくっつくと
ཀྲˉtra (タ)
基字の下の
ྲ
がR系の有足字です。
R系の有足字は、文字としては「r」が付きますが、実際には子音全体の発音が変化します。
子音「tr」は舌を後ろに反らす「タ」で発音します。
R系の有足字一覧
R系の有足字は10種類あります。
基字ごとに発音変化のパターンが決まっています。
| 基字(元の音) | 読み(基音) | R系を付けた形 | 読み(変化後) |
|---|---|---|---|
| ཀ | ˉka(カ) | ཀྲ | ˉtra(タ) |
| ཁ | ˉkʰa(カ) | ཁྲ | ˉtrʰa(タ) |
| ག | ˊkʰa(カ) | གྲ | ˊtrʰa(タ) |
| ད | ˊtʰa(タ) | དྲ | ˊtrʰa(タ) |
| པ | ˉpa(パ) | པྲ | ˉtra(タ) |
| ཕ | ˉpʰa(パ) | ཕྲ | ˉtrʰa(タ) |
| བ | ˊpʰa(パ) | བྲ | ˊtrʰa (タ) |
| མ | ˊma(マ) | མྲ | ˊma(マ) |
| ས | ˉsa(サ) | སྲ | ①ˉtra(タ)②ˉsa(サ) |
| ཧ | ˉha(ハ) | ཧྲ | ˉhra(フラ) |
མྲˊma(マ)
のように、R系の有足字がついても「ラ」行の音に変化しないケースがあります。
あと、སྲ
の発音は、 ①ˉtra(タ)と ②ˉsa(サ) の2通りがあるで!
単語ごとに決まっているため、辞書や教材で確認しながら覚えましょうね~
R系の有足字を使った単語例
ཁྲི། ˉtrʰi(ティ)
台座
གྲུ། ˊtrʰu(トゥ)
舟
བྲག ^trʰaa(ター)
岩
L系の有足字
L系の有足字が付くと、どう発音が変わるのか?
例えば、基字
ཀˉka (カ)
にL系の有足字がくっつくと
ཀླˉla (ラ)
基字の下の
ླ
がL系の有足字です。
このように、L系の有足字が付くことで「ラ(L)行の音」が加わります。
L系の有足字一覧
L系の有足字は6種類あります。
基字ごとに発音変化のパターンが決まっています。
| 基字(元の音) | 読み(基音) | L系を付けた形 | 読み(変化後) |
|---|---|---|---|
| ཀ | ˉka(カ) | ཀླ | ˉla(ラ) |
| ག | ˊkʰa(カ) | གླ | ˉla(ラ) |
| བ | ˊpʰa(パ) | བླ | ˉla(ラ) |
| ཟ | ˊsa(サ) | ཟླ | ˊnda(ンダ) |
| ར | ˊra(ラ) | རླ | ˉla(ラ) |
| ས | ˉsa(サ) | སླ | ˉla(ラ) |
ཟˊsa(サ)
にL系の有足字がくっついた
ཟླ
はˉla(ラ)ではなくˊnda(ンダ)と発音します。
この文字は例外なので、個別に覚えておこうね!
L系の有足字を使った単語例
ཀླུ། ˉlu(ル)
龍神
གླ། ˉla(ラ)
賃金
བླ་མ ˉlama(ラマ)
ラマ (高僧)
W系の有足字
W系の有足字が付くと、どう発音が変わるのか?
例えば、基字
ཞˊsya (シャ)
にW系の有足字がくっつくと
ཞྭˊsya (シャ)
基字の下のྭがW系の有足字です。
W系の有足字が付くと前の子音に「wの丸み」を加えて発音を変化させます。
なお、実際の発音変化は弱い模様。
ニューエクスプレスでは「発音が変わらない」と説明しているゾ~
W系の有足字一覧
W系の有足字は、ニューエクスプレスでは2種類が紹介されています。
| 基字(元の音) | 読み(基音) | W系を付けた形 | 読み(変化後) |
|---|---|---|---|
| ཞ | ˊsya(シャ) | ཞྭ | ˊsya(シャ) |
| ད | ˊtʰa(タ) | དྭ | ˊtʰa(タ) |
W系の有足字を使った単語例
ཞྭ་མོ། ˊsyamo(シャモ)
帽子
R系とW系の有足字
R系とW系の有足字が付くと、どう発音が変わるのか?
一部の文字では、R系とW系の有足字が同時に付く場合があります。
ニューエクスプレスチベット語では、1文字だけ紹介されています。
基字
གˊkʰa (カ)
にR系とW系の有足字がくっつくと
གྲྭˊtrʰa (タ)
基字の下に付いているྲྭがR系とW系の有足字です。
W系の有足字は単独では音を持ちませんが、
前の子音に「wの丸み」を加えて発音を変化させます。
R系とW系の有足字を使った単語例
གྲྭ་པ། ˊtrʰapa タパ
僧侶
སློབ་གྲྭ། ˉloptra ロプタ
学校
「学校(སློབ་གྲྭ)」の前半にあたるསློབは、以下の3つに分解できるゾ~
- 基字ས(単独ではs)
- L系の有足字ླ(単独ではL)
- 後置字བ(単独ではp)
後置字と有足字が混ざると、読む難易度が一気に上がりますねぇ!
まとめ
本記事の結論
今回の記事では「有足字(ゆうそくじ)」について、
その意味・形の特徴・発音ルールを解説しました。
有足字はチベット語の発音変化の中でも重要なポイントなので、
まずは「基字の下に付く文字」という構造をしっかり押さえておきましょうね~
次回は「有頭字(ゆうとうじ)」について解説してイクゾー!
こちらの単語リストもどうぞ
ニューエクスプレスに出てきたチベット語の基礎単語900語(カタカナ読み・日本語訳付き)
単語リストを見ながら、自分でチベット文字を読めるか挑戦してみよう!(提案)
有足字を理解すると、チベット文字を読める単語が一気に増えてきます。
次回は「有頭字」も学んで、さらに読める文字を増やしていきましょう。



