ラテン語を読むために必要最低限の文法知識

最低限の努力でラテン語を読みたい!

だけどラテン語の語学書だと文法が難しく説明されている。
ネットでしらべてもラテン語学習サイトが少なくて探すのが大変!

なので本記事ではラテン語をとにかく読みたい!っていう人向けの説明になる。
難しい文法説明は無い。

ラテン語を読むのに最低限必要なラテン語

文法は全く知らなくてもラテン語は読める。

ラテン語の文章にある単語の意味を1つ1つ覚えれば英語の知識でどうにか読める。

みんな難しく考えすぎ。ラテン語を読むだけなら文法は不要

だけどそれだと読む効率が悪い。
なので、まずはザーっとラテン語の予備知識を付けたほうが良い。

ラテン語に限らず、他の言語や物事でも言えることだが、新しいことを始めたときはまず全体像をつかむのが良い。

いきなり細かい事からやろうとすると全体像を見失ってしまう。
迷子になってしまうのを避けるための対策として全体把握をする。

それが文法の学習。
文法学習は最低限の努力でやりましょう。

メインはラテン語を読むことだからね。



最低限の努力で覚えるラテン語文法

そもそも「ラテン語」って何?

英語やドイツ語、フランス語みたいなヨーロッパ言語

文法や文字、単語は英語と良く似ている。

ただし、英語やドイツ語、フランス語と大きく異なる点がある。

それは、ラテン語が「死語」という点。

ラテン語は今から2000年前の古代ローマ時代に使われていた言語。

でもローマ帝国はあっけなく滅びた。
そしてラテン語は言語の形を変えて他のヨーロッパ言語へと変わってきた。

そして現在のヨーロッパに至る。
現在ではラテン語のネイティブがいない

今の時代に使われるとしたら、バチカン市国のローマ法王が儀式のためにラテン語をしゃべる時くらい。

普段の生活では誰もラテン語を日常生活で使っていない。
にもかかわらず現在でも多くの人がラテン語を学んでいる。

それはなぜか?
その大きな理由は「教養」だと思う。

現在使われている英語やドイツ語、フランス語は、元々ラテン語から作られている

英語の辞書を引いて単語の意味を調べた経験は誰もがあると思う。

単語の意味が書かれている説明の最後に「英単語の語源はラテン語の~」みたいな説明を見た事はないだろうか?

英単語の大半はラテン語が元になっている。
(ギリシャ語が語源のケースも多いが)

ラテン語を学ぶことでもちろん古代ローマ時代の文献が読めるようになる。

だけど、それだけじゃない。
ラテン語を知ることで英語の起源もなんとなく理解できるようになる。

そんな魅力的な言語、それがラテン語
(もちろん、他の言語も魅力的ですが・・・)

ラテン語はどんな文字が使われるの?

ラテン語の例文を以下に挙げる。

Gallia est omnis divisa in partes tres, quarum unam incolunt Belgae, aliam Aquitani, tertiam qui ipsorum lingua Celtae, nostra Galli appellantur.

ラテン語をパッと見ると英語と同じ「abcde…」のアルファベットが使われている。
しかも単語と単語の区切りにはスペースがある。

英語やほかのヨーロッパ言語とそっくりな方法で書かれている。

ドイツ語みたいに「ä」「ö」「ü」「ß」のような文字は出てこないので心配しなくていい

ラテン語の発音は?

ぶっちゃけ言えばそのまんまローマ字読みをすればいい。

英語の場合はスペルと違う発音をする単語もある。
だけどラテン語は不規則な読み方をする単語は滅多にない。

書いてある文字通りに発音するだけ。

むしろラテン語は日本語のローマ字読み風に読んでもいいくらい。
小文字が2文字続いた場合は日本語の「ッ」音を入れるだけ。

例えば「Gallia」なら

ラテン語読みで「ガッリア」
ちなみに英語読みなら「ガリア」になる。

ラテン語読みでちょっと注意をするのが「v」の発音
「v」は「ヴィー」ではなく「ウ」で発音する。

dividitは「ディーヴィデト」ではなく「ディーウィディト」と読む。

ラテン語で「v」を見かけたら「u」で発音する、と考えて良い。

あとは「j」は「ジュ」ではなく「ユ」と読む。
でも、ラテン語文献の場合は「j」が全部「i」で書かれていることが多いので無視していい。

まぁ、読むだけの場合は発音を過度に気にしなくていい。
内容が分かればいいんですよ。分かれば。



ラテン語の語順は?

英語はSVO
ラテン語もヨーロッパ言語だからSVO・・・と思いきや、違う。

ラテン語の語順は自由。
活用が多い分、単語の順番を自由に並べ替えることができる。

しかし語順は習慣的な決まりがある。
大抵は日本語と同じSOVの語順になる。

つまりラテン語の文章は大抵は「主語→目的語→動詞」の順番になる。

例えば、以下のラテン語ならSOV

nostra Galli appellantur.

主語は最初のnostra(私たちは)
動詞は最後のappellantur(呼ばれている)

だけど、たま~に英語と同じSVOになる場合もある。

Gallia est omnis divisa in partes tres

主語は最初のGallia(ガリア)
動詞は最後・・・ではなく、2番目のest(英語のis)

まぁ、SVOがどれか?とか単語の品詞は何か?は、単語の意味を調べればすぐわかる。
なので語順は気にしなくていい。

ラテン語の単語の意味を調べる方法は?

ラテン語を読むためだけの目的でラテン語辞書は買わなくていい。
と言うか活用の知識がないと辞書が使えない。

辞書を引くためにはかなりの文法学習が必要になる。
それだとラテン語を読む前に挫折する。

なのでネットの力を借りましょう。
今の時代はネットがマジで強力。

ラテン語は単語が活用しまくる。
だけどネットで検索すればキチンと原形に戻したラテン語単語として意味が引っかかるので安心

例えばラテン語の文中に「praefuit」という単語があったとする。
これをネットで「praefuit」で検索するとこんな風に検索結果が出ると思う。

ラテン語の原形:praesum, praeesse, praefui, praefuturusbe
ラテン語の意味:in charge/control/head; take the lead; be present

原形なのに、なんで4個もあるんだよ!という突っ込みもあるかもしれない。
だけどこれがラテン語。

ラテン語は英語と同じ文法ではありません。
なので文句を言うのは我慢してラテン語のルールに従いましょう。

とりあえず「praefuit」の原形は一番左側に書かれている「praesum」と思っていい。

意味は大抵は英語で出てくる。
英語すら分からない場合は、その英単語でもう一回検索すればすぐに日本語訳が出る

これでラテン語の単語の意味を調べれる。

ラテン語の単語の意味を調べる時の注意点は?

ラテン語の場合は英語と違って、単語の後ろに「-que」とか「-cum」とかがくっつくことがある。

日本語の名詞の後ろに付く助詞「て」「に」「を」「は」みたいなもの

例えば「proximique」は「proximi」に「que」がくっついたもの

「proximi」は「最も近い」
「que」は「一緒に」という意味になる。

そういう複数の単語の意味が1つの単語に丸投げされていると考えればいい。

他にも「secum」なら「se」+「cum」と考えて良い。

ラテン語の単語の後ろにくっつく「-que」、「-cum」は他にもたくさんある。

全部覚えるととても大変なので覚えなくていい。

そういうものもあるんだなーっていう感じで頭の中に入れればいい。

単語の意味を調べたけど、どうしてもひっかからない!
という場合はラテン語単語の最後に「-que」みたいなのがくっついているのかな?と疑ってみるといい。

単語の最後のアルファベットを2~3文字程度消して再度検索してみるといいよ。

ラテン語にも英語の「関係代名詞」があります

そもそも「関係代名詞」って何?

中学校や高校の英語の授業で覚えさせられる内容。
それが「関係代名詞」

英語学習で嫌になる文法用語の一つになっている。

例えば以下の英文なら、関係代名詞は「who」になる。
The woman who was walking on the street while singing was my mother.
(歌を歌いながらその道を歩いていた女性は、私の母だ。)

「who」の先行詞は「woman」になる。
「who」以降の文章が「who」の前の先行詞を詳しく説明している。

それが関係代名詞「who」
他にも「which」「that」もあったよね

ラテン語にも「関係代名詞」がある

ラテン語文献では関係代名詞が嫌と言うほどたくさん使われている。

例えば以下の例文なら関係代名詞は「quarum」になる。

Gallia est omnis divisa in partes tres, quarum unam incolunt Belgae, aliam Aquitani, tertiam qui ipsorum lingua Celtae, nostra Galli appellantur.

「quarum」の前の文章「Gallia est omnis divisa in partes tres」が先行詞
そして、その内容を「quarum」の後の長~い文章で細かく説明している。

関係代名詞自体も活用します

ラテン語の関係代名詞は英語の「who」「which」「that」だけでは済まない。
活用して色々な形に変えまくる。

関係代名詞かどうかの見分け方としては以下がある。
・「qui」や「cuius」っぽい単語が先に来た
・その後ろで何か説明している

そういう場合、「あ~これは関係代名詞じゃないかな~」と推測していい。

もしくはラテン語の単語の意味が「who,which」だったら、まず関係代名詞と疑っていい。

動詞かどうかを見分ける方法

動詞は文章を理解する上で重要になる。

ラテン語を読むときは動詞がどれかを早く知りたい。
なので動詞かどうか見分ける方法を説明する。

なお、動詞の役割(過去、未来、仮定法)は分からなくても大丈夫。
文脈からなんとなく動詞の時制が予想できるからね

ラテン語文献で使われる動詞は大体決まっている

文献でよく使われる動詞のパターンは以下

・三人称単数(彼)
・三人称複数(彼ら)
・過去形(~した)
・未来形(~するつもり)
・受動態(~される)

逆に一人称(私)、二人称(あなた)とか、命令形、仮定法はほとんど使われないので無視していい。

そうすれば、最低限の努力で動詞がどれかすぐに分かる。

文章の最後の単語は動詞と疑う

まずはラテン語がSOVの法則を活かして、文章の最後の単語が動詞かな?と疑う。
以下の場合、文章の最後の単語は「pertinet」かな~?と疑う。

Aquitania a Garumna flumine ad Pyrenaeos montes et eam partem Oceani quae est ad Hispaniam pertinet

単語の最後が「t」で終わっていれば大抵は動詞

次に単語の最後が「t」で終わっているか確認する
以下の場合は「t」で終わっているので、ほぼ動詞と疑っていい。

「pertinet」

ちなみに「t」で終わる動詞は三人称単数(彼)か三人称複数(彼ら)のどっちかになる

「t」で終われば動詞になる法則は、不規則な活用をするbe動詞でも当てはめることができる
その活用表をよ~く見てみると三人称単数と三人称複数はほとんどが「t」で終わっている。

一方、「t」で終わっていない場合でも、動詞の可能性がある。
その見分け方を以下に説明する。

単語の途中に「ba」「bi」があったら動詞

例として「amabatis」や「amabimus」も動詞。

単語の途中に「ba」や「bi」があるね。

ちなみに「ba」が入っていれば過去形
「bi」が入っていれば未来形

正確には「ba」は「直説法能動態未完了過去」、「bi」は「直説法能動態未来」って言う。
なんだけど頭が痛くなるだけなので覚えなくていい。

単語の最後が「ur」で終わっていれば動詞

ラテン語例文を以下に挙げる。
Belgae ab extremis Galliae finibus oriuntur

動詞はどれでしょうか?

正解は「oriuntur」
「ur」で終わっているので動詞だとすぐ分かる。

ちなみに「ur」で終わる動詞は受動態(~される)の役割を持つ。
これは文脈でなんとなくわかるので覚えなくていい。

ラテン語の教科書によくある動詞の活用形は覚えなくていい

ラテン語の教科書によくある例を示す。

私    :amō
あなた  :amās
彼    :amat
我たち  :amāmus
あなたたち:amātis
彼ら   :amant

※英語「love」に相当するラテン語「amō」の現在形の活用形

でも私はラテン語の動詞活用の形なんて全然頭に入っていない。

だけど、ラテン語文章内で初めて見る単語でも動詞かどうかすぐに判断できる。

まとめ

ラテン語を読むための準備は最低限にしよう。

・ラテン語もヨーロッパ言語
・英語と同じアルファベット
・そのままローマ字読みするだけ
・語順は日本語と同じSOV
・ラテン語単語の意味はネットですぐに調べれる
・単語の最後の「-que」,「-cum」等に注意
・英語と同じ関係代名詞「qui」がある
・動詞を見分ける為に活用表は覚えなくていい

上記がラテン語の全体像

あとは単語の意味を一つ一つ調べて覚えるだけ。
それだけでラテン語がスムーズに読めるようになる。

文法知識なしてもラテン語がスラスラ読めるようになるのってスッゴイ気持ちいいよ!