母音「ア」を示す「パタハ」という母音記号がある。
ある条件を満たすと、語末に「パタハ」が挿入されて母音「ア」を付け加える
前回の復習
「潜入パタハ」って何?
「潜入」+「パタハ」
「パタハ」は、母音「ア」を示す横棒「-」の母音記号
例えばאַ(a)は、אの下に横棒「-」が付いているね。
この横棒は、母音「ア」を示す母音記号
「パタハ」が単語の語末に挿入される現象を「潜入パタハ」と呼ぶ
ちなみに「潜入パタハ」は記号の名前ではない!
「パタハ」→母音記号の名前
語末に「パタハ」が付く文法用語が「潜入パタハ」
「潜入パタハ」が付く文字
単語の語末が以下3つのどれかの場合、「潜入パタハ」が起こる可能がある。
ח(Kh)
ע(無音)
הּ(H)
注意点として、語末がה(H)の場合は「潜入パタハ」が発生しない。
なぜなら語末のהは子音ではなく「無音」だから。
マピクが付いたהּなら、「潜入パタハ」の可能がある
「潜入パタハ」が起こる条件
以下条件を満たすと、語末に「パタハ」が付くことがある
・語末がח ע הּのどれか
・単語の最後の音節にアクセントが付く
なお、上記の条件を満たしても100%「潜入パタハ」が発生するとは限らない。
たまに「潜入パタハ」が起こらないこともある(らしい)
「潜入パタハ」の発音
「潜入パタハ」が起こると、以下のように発音する。
חַ(…aKh・…アフ)
עַ(…a・…ア)
הַּ(…aH・…アフ)
子音の前に母音「ア」が挿入される。
子音の後に「ア」が付くのではないよ!
子音の前に母音「ア」が挿入される(2回目)
通常の「パタハ」だとחַは「Kha・ハ」と発音する。
だけど、語末に「パタハ」が付いたחַは
(…aKh・…アフ)
と発音する。
「潜入パタハ」の例
רוּחַ(RuaKh・ルアフ)=風
単語の最後がח(Kh)になっているね。
חの下に付いた横棒「-」が「パタハ」
発音は
RuKha・ルハ
ではなく
RuaKh・ルアフ
子音の後ではなく、前に母音「ア」が挿入されるんだゾ~(三回目)
もしרוּחַを「RuKha・ルハ」って読むと発音しにくいでしょ?
そこで母音「ア」の位置を前にずらして「RuaKh・ルアフ」と発音するようになったと思う。
日本語で言うと「トウモロコシ」を「トウモコロシ」のように、音を入れ替えて発音してしまうイメージ
参考までに、
רוּחַ(RuaKh・ルアフ)
を発音通りに書くと以下になる。
רוּאַח(RuaKh・ルアフ)
「パタハ」が語末に付いた場合、最後の子音の前に
אַ(a・ア)
の「音」が挿入されると考えてOK
「潜入パタハ」の表記方法
先ほど紹介した
רוּחַ(RuaKh・ルアフ)=風
の横棒「-」の部分(パタフ)が「潜入パタハ」によって生じた「音」である事を明示するために、横棒「-」を右にズラして書く事もある。
入門書の場合は、「パタハ」は右にズラさずにそのままחַと書く事が多い。
補足 ~ אとעの違い
אとעは、どちらも無音の子音
ただし、語末のאに「潜入パタハ」は起こらない。
母音「エ」を示す読みの母になる事が多い。
一方、語末のעは「潜入パタハ」が起こる(可能がある)
だから、ヘブライ語は同じ「無音」の子音אとעの2つが存在する必要があったんですね。
(メガトン構文)
「潜入パタハ」ありの単語
2文字
כֹּחַ(KoaKh・コアハ)=力(ちから)
「KoKha・コハ」ではなく「KoaKh・コアハ」と読む
3文字
גָּבֹהַּ(GaVoaH・ガヴォアフ)=高い
前の記事で紹介した
גֹּבַהּ(GoVa・ゴヴァ)=高さ
は、最後の音節にアクセントが無い
最初の音節גֹּ(Go・ゴ)の方にアクセントが来る。
よって「潜入パタハ」は起こらない。
なので、最後のהּ(H)は発音しない
לוּחַ(LuaKh・ルアフ)=板
שָׂמֵחַ(SaMeaKh・サメアフ)=喜ぶ
4文字
מִזְבֵּחַ(MiZBeaKh・ミズベアフ)=祭壇
זְרוֹעַ(ZeRoa・ゼロア)=腕
תַּפּוּחַ(TaPuaKh・タプアフ)=りんご
מָשִׁיחַ(MaShiaKh・マシアフ)=メシア(男の名前)
「メシア」は「油を注がれた者」の意味
なお、私が「メシア」という言葉を覚えたキッカケは聖書…
…ではなく「パワポケ7」と言う野球ゲームに出てくる「目史亜(めしあ)」
私が小学生の時は、意味が分からないまま「めしあ」という言葉だけ覚えていた。
パワポケ7サクセス表 プレイ動画part3 甲子園ヒーロー編
ちなみに、目史亜(めしあ)が属するチームメンバーの名前一覧が以下
ヘブライ語の知識がある私が改めて名前一覧を見ると、ユダヤ教徒の聖書で出てくる名前だらけじゃん・・・
「矢昆布」が「やこぶ」www
元ネタはיַעֲקֹב(Ya’aKoV・ヤアコヴ)ですなwww
יוֹדֵעַ(YoDea・ヨデア)=彼は、知っている
上記は,三語源の最後の文字がע(無音)やח(Kh)で構成されるパアル態動詞になっている。
その動詞が「現在形・単数・男性形」になった場合「潜入パタハ」が起こる可能が高い。
לוֹקֵחַ(LoKeaKh・ロケアフ)=彼は、取る
שׁוֹלֵחַ(ShoLeaKh・ショレアフ)=彼は、送る
בּוֹרֵחַ(BoreaKh・ボレアフ)=彼は、逃げる
נוֹסֵעַ(NoSea・ノセア)=彼は、乗って行く
נוֹגֵעַ בְּ(NoGea Be・ノゲア べ)=彼は~に触れる
פּוֹתֵחַ(PoTeaKh・ポテアフ)=彼は、開く
פָּתוּחַ(PaTuaKH・パトゥアフ)=開かれた
↑は、先ほどのפּוֹתֵחַ(PoTeaKh)の受動分詞
מְשַׂמֵּחַ(MeSaMeaKh・メサメアフ)=彼は、喜ばせる
ピエル態動詞の「現在形・単数・男性形」で「潜入パタハ」が起こるケース
מַבִּיעַ(MaBia・マビア)=彼は、表現する
ヒフィル態動詞の「現在形・単数・男性形」で「潜入パタハ」が起こるケース
הִצִּיעַ(HiTsia・ヒツィア)=彼は、提案した
ヒフィル態動詞の「過去形・三人称・単数・男性形」で「潜入パタハ」が起こるケース
הִגִּיעַ(HiGia・ヒギア)=彼は、到着した
5文字
יְהוֹשֻׁעַ(YeHoShua・イェホシュア)=ヨシェア(男の名前)
מַבְטִיחַ(MaVTiaKH・マヴティアフ)=彼は、約束する
ヒフィル態動詞の「現在形・単数・男性形」で「潜入パタハ」が起こるケース
מַצְלִיחַ(MaTsLiaKh・マツリアフ)=彼は、成功する
הוֹדִיעַ(HoDia・ホディア)=彼は、知らせた
ヒフィル態動詞の「過去形・三人称・単数・男性形」で「潜入パタハ」が起こるケース
הוֹשִׁיעַ(HoShia・ホシア)=彼は、救った
破滅から救うニュアンスを持つ動詞。
הוֹפִיעַ(HoFia・ホフィア)=彼は、姿を現した
新たな発音ルール~אָיו(aV)