ヘブライ語における三語源を説明してみた

ヘブライ語も、アラビア語と同様に「三語源」の概念がある。

(おそらく)全ての単語は三つの子音から作られているっていう内容ね!
※ただし、外来語は除く




【参考】アラビア語における三語源

アラビア語の紹介で良く聞く「三語源」って何よ!?

三語源(さんごげん)って何?

全ての単語は、3個の子音がベースになっている

たとえば、以下の動詞がある。
כָּתַב(KaTaV・カタヴ)=彼は書いた

 

上記の動詞は、以下3つの子音から成っている。


כ (Kh)

ת (T)

ב (V)


3つの子音の組み合わせに意味を持つ

3つの子音を組み合わせた
כ・ת・ב (Kh・T・V)

三語源(さんごげん)と呼ぶ

 

כ・ת・ב (Kh・T・V)
の場合、「書く」の意味を持つ語源になっている。

 

単語生成のイメージ

イメージを以下の図に示す。

 

三語源כתב(Kh・T・V)は「書く」の意味なので、「書く」に関連した単語が派生している。

単語の作られ方

三語源כתב(Kh・T・V)をベースに、以下の操作を行うことで、色々な単語が作れる。


・文字を追加
・母音を付ける
・文字にダゲシュの点「・」を付ける





三語源כתב(Kh・T・V)から作られる単語の例

כָּתַב=彼は書いた

כָּתַב(KaTaV・カタヴ)=彼は書いた

パアル態の動詞に分類される。
三語源כתב(Kh・T・V)から作られた単語の基本形みたいな物。

 

上記は、三語源の1文字目כ(Kh)にダゲシュ点「・」が付いてכּ(K)になっている。
子音の発音はכ(Kh)→כּ(K)に変わる

נִכְתַּב=彼は書かれた

נִכְתַּב(NiKhTaV・ニフタヴ)=彼は書かれた

ニフアル態の動詞に分類される。

先ほど紹介したパアル態受動態

 

三語源の前にנ(N)の文字が挿入されている。
ニフアル態の場合、単語の最初にנִ(Ni)が付くことが多い

 

あと、三語源の2文字目ת(T)にダゲシュ点「・」が付いてתּ(T)になっている。
現代ヘブライ語では発音は変わらないので、ת、תּどちらも「T」と発音してOK

הִכְתִיב=彼は書き取らせた

הִכְתִיב(ヒフティヴ・HiKhTiV)=彼は書き取らせた

ヒフィル態の動詞。
「~させる」という使役の意味を持つことが多い。

 

三語源の前にהִ(Hi)がくっついている。
また、三語源の2文字目ת(T)と3文字目ב(V)の間に、子音י(Y)が挿入されている。

הִתְכַּתֵב=彼は文通した

הִתְכַּתֵב(HiTKaTeV・ヒトカテヴ)=彼は文通した

ヒトパエル態の動詞
「互いに~する」の意味を持つことが多い。

 

三語源の前にהִתְ(HiT)が付くのが特徴

לִכְתֹּב=書く事(不定詞)

לִכְתֹּב(LiKhToV・リフトヴ)=書く事(不定詞)

 

先ほど紹介したパアル態動詞
כָּתַב(KaTaV・カタヴ)
不定詞になった形。

 

不定詞になる場合、三語源の前にלִ(Li)が付くことが多い。

כְּתִיבָה=書く事(動名詞)

כְּתִיבָה(KeTiVa・ケティヴァ)=書く事(動名詞)

 

先ほど紹介したパアル態動詞
כָּתַב(KaTaV・カタヴ)
動名詞になった形。

 

三語源の2文字目ת(T)と3文字目ב(V)の間に、子音י(Y)が挿入されている。

 

また、最後にה(H)が付いている。

パアル態動名詞の場合、最後のה(H)は発音しない。
前に来た子音、つまり三語源の3文字目ב(V)の母音が「ア」になる。

 

先ほどの不定詞の「書く事」と、動名詞の「書く事」は、日本語訳だと同じ。
だけど使い方は異なる。

 

不定詞は動詞の後に付けて意味を補足したり、命令の意味になったりする。
それに対して、動名詞は名詞と同様の扱いになる。

これ以上詳しく説明を記すには余白が狭すぎる。

כָּתוּב=書かれた

כָּתוּב(KaTuV・カトゥヴ)=書かれた

 

先ほど紹介したパアル態動詞
כָּתַב(KaTaV・カタヴ)
受動分詞になった形。

 

三語源の2文字目ת(T)と3文字目ב(V)の間に、母音וּ(ウ)が挿入されている。

 

先ほどのニフアル態の動詞
נִכְתַּב(NiKhTaV・ニフタヴ)=彼は書かれた

と、受動分詞
כָּתוּב(KaTuV・カトゥヴ)=書かれた

は意味が似ているが、使い方が異なる。

 

ニフアル態の動詞は、動詞扱い。
人称によって単語の形が変わる。

 

それに対して、受動分詞は名詞扱い。
単語の形は人称の影響を受けない(性と数のみ影響する)

כּוֹתֵב=書く

כּוֹתֵב(KoTeV・コテヴ)=書く

 

先ほど紹介したパアル態動詞
כָּתַב(KaTaV・カタヴ)
能動分詞になった形。

 

現在ヘブライ語の場合は、動詞の現在形扱いになる。

 

動名詞の「書く事」と能動分詞の「書く」の違いを記すには余白が狭すぎる。

私も動名詞と能動分詞の違いが良く分からないwwww

כִּתוּב=タイトル

כִּתוּב(KiTuV・キトゥヴ)=タイトル

これも三語源の2文字目ת(T)と3文字目ב(V)の間に、母音וּ(ウ)が挿入されている。
三語源の1文字目כ(Kh)の母音が「イ」になっている事に注目!

 

元はピエル態の動詞である
כִּתֵּב‎(KiTeV)=彼は繰り返し書いた
動名詞になった形。

 

「繰り返し書くモノ」=「タイトル」と解釈できる。

מִכְתָּב=手紙

מִכְתָּב(MiKhTaV・ミフタヴ)=手紙

三語源の前にמִ(Mi)がくっついた形

 

元はピエル態の動詞である
כִּתֵּב‎(KiTeV)=彼は繰り返し書いた
受動分詞(?)になった形

 

「繰り返し書かれた物」=「手紙」と解釈できる。

他に派生した単語

כַּתָּב(KaTaV・カタヴ)=新聞記者

כְּתִיב(KeTiV・ケティヴ)=綴り、正書法

כְּתוּבָּה‎(KeTuBa・ケトゥバ)=ユダヤ教における結婚契約

 

詳しくは以下サイトを見て、どうぞ

wiktionary כ־ת־ב

ヘブライ語辞書の使い方

単語の掲載順は三語源

辞書の単語の見出しに載る単語は、基本的に三語源のみ

 

つまり、調べたい単語のベースとなった三語源が何なのか分からないと紙の辞書が引けない。

まぁ、現代はネット検索でヘブライ語単語をggれるから・・・(震え声

語学書の場合

ヘブライ語を学び始めた人は、ヘブライ語単語から三語源を導くのが難しい。
たまに三語源の子音が省略されたりするからね、しょうがないね

 

その為、入門書の最後にある単語リストの場合は
英語と同様にヘブライ文字のアルファベット順に載っている(事が多い)

アルファベット順に単語を並べる問題点

単語によっては、三語源の前に文字が付く単語があるよね?


הִכְתִיב(ヒフティヴ・HiKhTiV)=彼は書き取らせた
הִתְכַּתֵב(HiTKaTeV・ヒトカテヴ)=彼は文通した
לִכְתֹּב(LiKhToV・リフトヴ)=書く事(不定詞)
מִכְתָּב(MiKhTaV・ミフタヴ)=手紙


 

例えば、ヒトパエル態の動詞הִתְכַּתֵבを意味を調べようとした時…

最初がהִתְで始める単語が大量に並んで探しにくい!

 

しかも、類似のヒフィル態の動詞の最初がהִで始まっているから、単語順がややこしくなる!

まぁ、ヒトパエル態やヒフィル態の動詞を調べるのには便利だけど…

 

ヘブライ語の場合は、三語源をベースに単語を生成する言語なので~

紙の辞書をアルファベット順に並べると使いにくいの!

なので、単語の見出しは三語源になっていることが多い。

ヘブライ語の動詞は7つの態(たい)がある

ヘブライ語の動詞は、7つの態(たい)に分類される話

参考文献

サイト

主が私を導かれる

動詞の「態(Voice)」について説明したサイト

語学書

ニューエクスプレス 現代ヘブライ語

ニューエクスプレス 古典ヘブライ語