ヘブライ語の動詞は、7つの態(たい)に分類される話

ヘブライ語の語学書では

パアル態、ピエル態、ヒフィル態、ヒトパエル態、フフアル態、プアル態、ニフアル態

のような暗号が出てくる。その内容を説明する。




前回の記事

ヘブライ語の単語は、3つの子音から成る

ヘブライ語における三語源を説明してみた

動詞も3つの子音から成る

例えば、以下の動詞

כָּתַב(KaTaV・カタヴ)=彼は書いた

 

は、以下3つの子音から成っているよ!


כ (Kh)

ת (T)

ב (V)


って言うことを説明した。

ヘブライ語の動詞は態(たい)で分類できる

態(たい)って何?

態(たい)は言語学の用語。

 

動詞の形が変化するルールを、パターンごとに分けた「型」みたいないもの

日本語にも態(たい)がある

日本語の動詞も、色々な活用パターンがあるよね?

※活用(かつよう)=動詞の形が変わる事

 


・五段活用
・上(かみ)一段活用
・下(しも)一段活用
・カ行変格活用
・サ行変格活用


 

五段活用の覚え方|中学生/国語

 

へぇ~、日本語はこんな活用があったんだ…

と気づくヘブライ語学習者www
私です。

動詞の変化は態(たい)毎に覚える!

例えば、「書く」は五段活用に沿って変化する。

私は、以下のように覚えてたと思う・・・


書かナイ
書きマス
書く
書くトキ
書けバ
書け


 

ヘブライ語の「書く」に相当する動詞は以下。
כָּתַב(KaTaV・カタヴ)=彼は書いた

この動詞の態(たい)「パアル態」に分類される。

 

「パアル態」は、日本語で言う「五段活用」みたいな物。

 

כָּתַב(KaTaV・カタヴ)の「過去形」は、以下のように活用する。

 


כָּתַבְתִּי(KaTaVTi・カタヴティ)=私は書いた
כָּתַבְתָּ(KaTaVTa・カタヴタ)=貴男(あなた)は書いた
כָּתַבְתְּ(KaTaVT・カタヴト)=貴女(あなた)は書いた
כָּתַב(KaTaV・カタヴ)=彼は書いた
כָּתְבָה(KaTeVa・カテヴァ)=彼女は書いた
כָּתַבְנוּ(KaTaVNu・カタヴヌ)=私たちは書いた
כְּתַבְתֶּם(KeTaVTeM・ケタヴテム)=貴男(あなた)たちは書いた
כְּתַבְתֶּן(KeTaVTeN・ケタヴテン)=貴女(あなた)たちは書いた
כָּתְבוּ(KaTeVu・カテヴ)=彼ら、彼女たちは書いた


כתב wiktionary




ヘブライ語の動詞は、7つの「型」がある

日本語と比較

日本語の動詞の場合、以下の活用パターンがある


・五段活用
・上(かみ)一段活用
・下(しも)一段活用
・カ行変格活用
・サ行変格活用


 

ヘブライ語の動詞は、以下7通りの活用パターンがある


パアル態
ピエル態
ヒフィル態
ヒトパエル態
フフアル態
プアル態
ニフアル態


態(たい)によって動詞の意味が決まっている

例えば、パアル態単純な動作を表す。
例:「書く」「食べる」

 

それに対して、ニフアル態はパアル態の受動態になる。
例:「書かれる」「食べられる」

 

ピエル態だと、動作の繰り返しを表す。
例:「書きなぐる」「食べまくる」

 

ヒトパエル態だと、「互いに~する」の意味になる。
例:「文通する」「会食する」

 

動詞の7つの態(たい)のイメージは以下

私が主を導かれる

自分なりに整理してみた

 

ヘブライ語の動詞の態(たい)は7つあるけど、大まかな意味は4つしか無い。

 

ヒトパエル態「以外」は能動態と受動態がセットになっている。

アラビア語と比較してみた

ちなみに、現代アラビア語の場合は態(たい)10個もある
(古いアラビア語も含めると15個あるらしい)

規則動詞型一覧:26 件

 

ヘブライ語とアラビア語の態(たい)を比較すると、以下になる(と思う)

 

アラビア語動詞の場合、態(たい)


第1形、第2形、第3形…、第9形、第10形


のように分類する。

 

例えば、アラビア語の「第1形動詞」は、ヘブライ語の「パアル態」に相当するよ!
っていう意味。

なぜ「パアル態」っていう名前なの?

ヘブライ語の態(たい)の名前に意味がある

7つの型をもう一回紹介する。


パアル態
ピエル態
ヒフィル態
ヒトパエル態
フフアル態
プアル態
ニフアル態


 

それぞれの態の名称自体が、母音の並びになっている。

パアル態の母音は「ア・ア・無音」

「パアル態」の「パアル」は、ヘブライ語だと以下になる

פָּעַל(Pa’aL・パアル)=彼は~した

 

参考までに、アラビア語だと
فَعَلَ(Fa’aLa・ファアラ)=彼は~した
に相当する。

 

で、ヘブライ語のפָּעַל(Pa’aL)の母音だけに注目すると
「a,a,無音」

になっている。

3番目の子音は母音記号が無いので、子音だけ発音する。

7つの型における母音の並び

以下になる。


パアル態→「ア・ア・無音」
ピエル態→「イ・エ・無音」
ヒフィル態→ヒ+「ウ・イ・無音」
ヒトパエル態→ヒト+「ア・エ・無音」
フフアル態→フ+「ウ・ア・無音」
プアル態→「ウ・ア・無音」
ニフアル態→ニ+「ウ・ア・無音」


 

ヘブライ語の動詞基本形は、3番目の子音の母音が無いのが特徴。

 

語学書で「ピエル態」と出てきたら
「イ・エ・無音」の動詞パターンだな!
とイメージできればOK

 

ヘブライ語の態(たい)の名前には意味がある事が分かったかな~?

7つの態(たい)のヘブライ語訳

態(たい)のヘブライ語

動詞の「型」に相当する態(たい)は、ヘブライ語だと
בִּנְיָן(BinYaN・ビンヤン)
になる。

 

ちなみに英語だと「Voice」

7つの態(たい)のヘブライ語

パアル態
פָּעַל(Pa’aL・パアル)=彼は~した

 

ニフアル態
נִפְעַל(NiF’aL・ニフアル)=彼は~された

 

ピエル態
פִּעֵל(Pi’eL・ピエル)=彼は繰り返し~した

 

プアル態
פֻּעַל(Pu’aL・プアル)=彼は繰り返し~された

 

ヒフィル態
הִפְעִיל(HiF’iL・ヒフィル)=彼は~させた

 

フフアル態
הֻפְעַל(HuF’aL・フフアル)=彼は~させられた

 

ヒトパエル態
הִתְפַּעֵל(HiTPa’eL・ヒトパエル)=彼は互いに~した

態(たい)によってダゲシュの有無が変わる

あれ?
3語源の一文字目が「プ(P)」になったり「フ(F)」になったりするんだけど…?

と思った兄貴は賢い!

 

態(たい)が変わると、ダゲシュの点「・」が付いたり消えたりする。

現代ヘブライ語で出てくる「ニクダー」や「ダゲッシュ」って何?

 

ダゲシュの有無まで説明すると複雑になるんで・・・

ヘブライ語動詞は、態(たい)によってダゲシュの点「・」が付いたり消えたりするんだよ!

っていう所までの説明で,本記事を終えることにする。