ニコニコ大百科にあったヘブライ語訳に使われている動詞が
「未来形 ( or 未完了形)」になっているので、「現在形」に修正してみた。
前回の記事
ニコニコ大百科にあったヘブライ語を解読してみた。
「未来形」とか「未完了形」って何?
ニコニコ大百科にあるヘブライ語の種類
ヘブライ語に詳しくなると、翻訳したヘブライ語が
現代ヘブライ語?
古典ヘブライ語 (= 聖書ヘブライ語)?
のどっちで書いているのか疑問に思ってしまう。
まるでギリシャ語を 「現代 or 古典」 で区別する感じ。
現代ver
古典ver
動詞の時制・相は?
ニコニコ大百科のヘブライ語訳で使われている(と思われる)動詞が以下
יְזַנֵּק
イェザネク
彼は飛び出す(であろう)
現代ヘブライ語の立場だと、「未来形」(時制)
古典ヘブライ語の立場だと、「未完了形」(相)
なお、「相(そう)」は「アスペクト」とも言う。
詳しくはウィキペディアを読んで♡
とりあえず「現代ヘブライ語」という事にしておく
ニコニコ大百科にあるヘブライ語訳が
現代ヘブライ語
古典ヘブライ語
のどっちか分からないけど、訳されたヘブライ語には母音記号が付いていない
古典ヘブライ語は、誰が読んでも同じ音になるように母音記号などを付けている。
それに対して、現代ヘブライ語は母音記号を付けないのが一般的
なので、ニコニコ大百科にあるヘブライ語訳は
「現代」ヘブライ語
という事にしておく。
単にgoogle翻訳結果をコピペしただけの説もある
動詞の時制は「未来形」になる
現代ヘブライ語なので・・・
以下動詞の時制は「未来形」と判断
יְזַנֵּק
イェザネク
彼は飛び出すであろう
ただし、「相(=アスペクト)」は不明
動作が完了したかどうかは文脈判断してね!
って事。
動詞を現在形に直してみました!
修正した現代ヘブライ語訳
動詞自体を、別の物に変更して時制を「現在形」にした。
הָא, הַלֵּב שֶׁלִּי קוֹפֵץ
アハ、ハレヴ シェリ コフェツ
あー、私の心が跳ねる。
上記のヘブライ文字は「母音記号」有り
「母音記号」については以下を読んで、どうぞ。
ヘブライ語訳のソース
「あぁ^~」に相当する感嘆詞以外は、以下から引用した。(赤枠)
発音方法
母音記号無しのヘブライ語
ヘブライ語は、右から左に読む
(日本語とは逆)
一番上にある黒文字が「ヘブライ文字」
「ヘブライ文字」は子音しか無い (中段の黄色セル)
その為、隠れた母音を補う必要がある。(下段の緑セル)
母音記号を付けたヘブライ語
黒が「ヘブライ文字(=子音)」
赤が「母音記号」
緑が「ダゲッシュ」(子音を区別する記号)
緑の「ダゲッシュ」が付いたヘブライ文字
「לּ」
は、現代ヘブライ語では音を区別しないので無視!
赤色の「母音記号」に注目~!
ヘブライ文字に赤文字の「母音記号」を付けて、読み方を明示している。
まとめると・・・
読む順番は「ヘブライ文字(黒)」→「母音記号(赤)」
「母音記号」→「ヘブライ文字」ではないので注意!
注意すべき発音
3行でまとめると以下
・「無音」の子音は発音しない
・SHは「シャ」の子音
・TSは「ツ」の子音
なお、母音は日本語の「アイウエオ」と考えてOK
もっと詳しい発音を知りたい兄貴は「現代ヘブライ語」の語学書を読んで、どうぞ
文法的な解説
解説する範囲
最初の部分
הָא, הַלֵּב שֶׁלִּי
アハ、ハレヴ シェリ
あー、私の心
は、特に修正なし。
文法は前回記事でも解説済なので省略!
最後の部分だけ解説する。
קוֹפֵץ
コフェツ
跳ねる
「קוֹפֵץ」=「跳ねる」
文法的に言うと
動詞の「現在形・単数・男性形」
時制が「現在形」の場合、動詞は4パターンの形がある。
・単数・男性形
・単数・女性形
・複数・男性形
・複数・女性形
なぜ「単数・男性形」を使うの?
文の主語になっている
הַלֵּב
ハレヴ
心
は、文法上の性グループは「男性」に区別される。
また、単数の形になっている
もし、複数の「心」になると、別の形に変わる
הַלְּבָבוֹת
ハルヴァヴォト
心(複数)
で、単数の「心」を意味する
הַלֵּב(ハレヴ)
は、文法上では「単数・男性形」のグループ。
なので、動詞もそのグループに合わせた形にする決まりになっている (=ヘブライ語文法)
現在形の場合は人称に影響されない
ヘブライ語における動詞の時制が「現在形」の場合、
「三人称」みたいな人称によって形は変わらない
だから主語が「心」「私(男)」「あなた(男)」「彼」どれも同じ動詞の形
קוֹפֵץ
コフェツ
跳ねる
を使う。
動詞の語源は「קפצ (K・F・TS)」
ここまで理解して読み進めた兄貴は、相当の語学マニアか、ヘブライ語に興味がある人。
なので、動詞についてさらに追及していく。(これを知的好奇心と言う)
先ほど示した動詞に戻る。
קוֹפֵץ
コフェツ
跳ねる
↑の語源は「קפצ (K・F・TS)」
「語源」については以下を読んで♡
アラビア語とヘブライ語は、同じ言語グループ。
なので、アラビア語の「語源」の考え方がそのままヘブライ語へ適用できる(と思う)
動詞の基本形は「קָפַץ(カファツ)」
語源「קפצ (K・F・TS)」から導いた動詞の基本形が
「קָפַץ(カファツ)」
「彼は跳ねていた」という意味になる。
文法的に言うと「過去形・三人称・単数・男性形」
動詞が過去形になると、人称も区別するのよん!
「パアル態」の動詞に分類される
「קָפַץ(カファツ)」はヘブライ語文法上では
「パアル態」の動詞
と呼ぶ。
基本形の母音並びが「a・a・無音」なので「パ(a)・ア(a)・ル(-)」ね
「パアル態」は、アラビア語で言うと「第~型の動詞」みたいなイメージ
で、「パアル態」動詞の時制を「現在形」にする場合・・・
「語源」の1文字目と2文字目の間に,「וֹ(o)」を挿入する。
(以下の赤字が挿入された文字)
קוֹפץ (コフツ)
あとは、「単数・男性形」の形にするだけ
(女性とか複数になると、また形が変わる)
ここまで読んだ兄貴の反応
一般人「な、何が何だかわからない・・・」
語学マニア「ふ、ふぅん。ヘブライ語ってこういう言語なのねー(理解できないけど分かったふり)」
セム語派に詳しい人「へー、ヘブライ語ってアラビア語と同じ特徴があるんだなー」
ヘブライ語学習者「何を今更!」
まとめ
全文をもう一回読もう(提案)
語学は繰り返しだって、はっきりわかんだね。
הָא, הַלֵּב שֶׁלִּי קוֹפֵץ
アハ、ハレヴ シェリ コフェツ
あー、私の心が跳ねる。
上記の例文を丸暗記するだけで、以下の事を学べるよ!
・定冠詞「הַ (その)」
・所有を表す前置詞「שֶׁל(~の)」の人称接尾辞
・動詞の現在形の活用
で、古典ヘブライ語に訳したらどうなるの?
現代ヘブライ語訳の「音」自体は古典ヘブライ語でも同じだと思う
(あるいは、それに近い発音)
ただ、古典ヘブライ語で「書く」となると難易度が跳ね上がる。
何故かと言うと、母音記号やダゲッシュ以外にも符号(タアメー・ハミクラー)を追加する必要があるから。
「タアメー・ハミクラー」は「古典ヘブライ語専用の符号」みたいな感じ。
以下の青字がタアメー・ハミクラー
青字はアクセントや句読点を正確に表すために付ける符号。
私が訳したヘブライ語
הָא, הַלֵּב שֶׁלִּי קוֹפֵץ
に「古典ヘブライ語専用の符号」を正確に付けるのは、ネイティブでも難しい(らしい)
母音記号ですら、ネイティブでも間違えて書く事があるみたい・・・
もし私が「古典ヘブライ語専用の符号」を付ける方法を学ぶ機会があれば、ついでに
「心ぴょんぴょん」の古典ヘブライ語訳を書いてみた
の記事を書く予定 (書くとは言ってない)
【参考】ヴァヴ倒置法を用いた古典ヘブライ語訳