ピカチュウの鳴き声は「ことば」ではない理由を言語学的に説明してみた

ポケモンSVの言語学授業の中で、ピカチュウの鳴き声を扱う授業がある。

で、ピカチュウの鳴き声は「ことば」と言えるのだろうか?
言語学的に考察してみた。




ポケモンSVにおける言語学の授業

心理学「・・・」

ポケモンSVの言語学の授業は本当に「言語学」と言えるのか?

そもそも「ことば」とは何か?

結論

分野・立場によって定義が異なるので一概に言えない。

 

例えば、美術の分野なら・・・
絵を見ることで作者の意図が分かる(事もある)

「絵」で意図を伝えれているんだから
「絵」に「ことば」を持っているんじゃないか!

 

他の例として、犬の飼い主が挙げられる。
犬は「ワンワン」としか鳴かないけど、飼い主はなんとなく犬の言いたいことが分かる。

だから犬は「ことば」を持っているんだ!
と飼い主は主張する。

 

・・・とここまでが、一般人の考える「ことば」のイメージ。

言語学の立場での「ことば」とは?

以下2つを同時に満たせば「ことば」だよ!
と定義している。


・でたらめに決まった「音」を持つ

・「音」を2段階に分けて分割できる


 

一般人「・・・何が何だか わからない・・・」

 

と言う反応が自然なんで、もっと説明しようか。

でたらめに決まった「音」を持つ

例えば、動物の鳴き声は感情に応じて変化させている。

本能で発している声だから、別に「音」のルールを学ばなくても何となくわかってしまう。


にゃー →元気だよ!
にゃ・・・ →元気がない
にゃああああ! →怒っている


 

一方、「ことば」における「音」は感情とは全く関係ない音。
伝えたい「意図」をでたらめな「音」に当てはめてルール化している。

つまり「音」のルールを学ばないと、何を言っているのか全く分からない。

例えば以下のような架空の単語があったとする。


safla →いいよ
fahsd →こいよ


 

例えば「safla」という単語の「音」そのものに意味は持たない。
単に、でたらめに決まった音。

その「safla」と言う音で「いいよ」という意味になるんだよ!
と事前に決めておく。

 

そのルールさえ覚えておけば、「safla」という音を聞いただけで

あっ!「いいよ」の意味なのか!

と理解できる。

 

そういう性質を持つのが「ことば」の定義の1つ。




「音」を2段階に分けて分割できる

先ほどのでたらめに決めた単語をもう一度紹介する。


safla →いいよ
fahsd →こいよ


 

上記の単語を並べると、もっと細かい意図が伝えれる。


safla fahsd


で「いいよ こいよ」の意味になる。

 

んで、「safla fahsd」の文は、「音」を2段階に分けれる。


元の文 [safla fahsd]

一回目 [safla] + [fahsd]

二回目 [s/a/f/l/a] + [f/a/h/s/d]


上記のように音を2段階に分ければ、無限パターンの文を作れる。

 

「a」や「b」のような「音の最小単位」はぜいぜい30パターン
これで単語を2~3万個くらい作れる。

たったの30パターンの「音の最小単位」で2~3万個もの単語をつくれるんだよ!

犬の持つ「音の最小単位」で一万個もの単語を作れるかな?
逆に一万個もの単語を持っていたら怖いよね?

 

更に言うと、2~3万個もの単語を組み合わせて文を作る。
文の長さはいくら長く作れるから、組み合わせパターンは無限!

無限パターンの意図を伝えるためには
「音」を2段階に分けて分割できる性質が必要になる。

「ことば」の定義~まとめ

まずは復習~


・でたらめに決まった「音」を持つ

・「音」を2段階に分けて分割できる


 

「ことば」の例が以下ね!


safla →いいよ
fahsd →こいよ


 

例えば「safla」という単語そのものが持つ音はテキトーに決まっている。
意味付けて決まったわけではない。
だから「safla」に対応する意味は覚えにくい

その代わりに単語を2万個も3万個もつくれる。
10万個だって可能。
とにかく膨大な量の単語を作り出せる。

 

だけど、人間が覚えれる単語量には限界がある。
さすが百万個もの単語は覚えれない。

そこで単語を並べて文を作ることを考え出した。


safla fahsd


これで「いいよこいよ」の意味を表せる
その時の「safla fahsd」と言う文は、「音」を二段階に分けて分解できる。

 

そういう性質があれば、無限の意図を伝えれる。

これが「ことば」なのです!

専門用語を使わずに、一般人にも分かるように説明しようとすると長くなる

ピカチュウの鳴き声が「ことば」でない理由

「ことば」の定義に当てはめて考えてみる

「ことば」の定義は以下の2つだったね!


・でたらめに決まった「音」を持つ

・「音」を2段階に分けて分割できる


 

ピカチュウの鳴き声は、上記2つの性質を持つのか考察してみる。

「ピカ~」はでたらめに決まった「音」なのか?

私はピカチュウの鳴き声パターンを一万個集めていないから断言できないんだけど・・・

 

ピカチュウの鳴き声って「ピカ~」から始まるイメージ。
むしろ、ピカチュウが「ギェピー」って鳴いたら怖いよね?
穴久保先生のピッピ

 

ピカチュウの「ピカ~」という鳴き声は
「ピカチュウ」というキャラクターを意味付ける「役割語」みたいなものだと思っている。

言語学における「役割語」については以下を読んで、どうぞ。

【ポケモンSV】ナンジャモちゃんのセリフを言語学における「役割語」で分析してみた

 

物語上で「ピカ~」と鳴けば、「あっ!ピカチュウだ!」と連想できるよね?

その「ピカ~」という「音」は「ピカチュウ」と意味付けられている。

 

「ピカ~」はあらかじめ決まった「音」
でたらめに決まった音ではない。

 

「ピカ~」は「ことば」の定義の1つである


でたらめに決まった「音」を持つ


の性質を持たない。

よって、ピカチュウの鳴き声は言語学的には「ことば」ではないと思う。

「ピッピカチュ~」は二段階に分けれるのか?

先ほど、ピカチュウの鳴き声は「ことば」ではない!

 

と述べたが、以下の性質は持つのだろうか?


「音」を2段階に分けて分割できる


上記についても分析してみる。

 

ピカチュウの長い鳴き声として「ピッピカチュ~」が挙げられる。
これを文と見なして考察してみる。

 

もし、「ピッピカチュ~」の音を二段階に分けれるのならば・・・
「ピッピカチュ~」のどこかに単語が使われているハズ。

 

分け方は仮に以下と考えてみた。


元の文:ピッピカチュ~

一回目:[ピッ]+[ピカチュ~]

二回目:[p/i/t]+[p/i/k/a/ch/u]


 

ピカチュウって果たして「ピッ」という単語を持つのかな・・・?

もし、ピカチュウの音を二段階に分けれるとしたら
ピカチュウは無限の鳴き声をしゃべれるハズ。

 

しかし、実際のピカチュウは同じような鳴き声をループで聞いているイメージ

もしかして、ピカチュウの鳴き声で無限の文を作れない・・・?
なので、音を二段階に分けれる性質は持ってなさそう。

 

よって、言語学的に「ことば」とは言えない。

まぁ、本気で調べて断言しようと思ったら
実際にピカチュウの鳴き声パターンを一万個以上集めないといけないから・・・(震え声)

まとめ

「ことば」の定義は、人の立場によって異なる

人によって脳みその中身が異なるから、考え方も違って当然。
「ことば」という単語の定義も人によって異なる。

 

まぁ、あまり考えすぎると

「ことば」という1つの単語なのに、なぜ人によって思い描く意図がブレてしまうのだろうか?

という哲学的な思考になってしまうので無視!無視!

言語学の世界における「ことば」の定義

以下2つの性質を「同時」に持てば「ことば」と言える。


・でたらめに決まった「音」を持つ

・「音」を2段階に分けて分割できる


 

念のため補足するが・・・

どちらか一方の性質しか持たない場合は「ことば」とは言えないからね!

ピカチュウの鳴き声「ことば」ではない

「ピカ~」の音はピカチュウのイメージで意図的に決まっている。

そして、ピカチュウの鳴き声は無限パターンを作れない。
よって、「音」を2段階のステップで分解できないと考えられる。

 

したがって、ピカチュウの鳴き声は言語学においては「ことば」ではない。

 

まぁ、ピカチュウのファンならピカチュウの鳴き声を「ことば」だ!
と主張するかもしれないが、私は否定しない。

先ほど述べた「ことば」の定義は人の立場によって異なるから・・・(震え声

 

お前が「ことば」と思うんならそうなんだろう
お前ん中ではな

 

ところでセイジ先生って言語学者?

ポケモンSVの言語学の授業で出てくるセイジ先生は言語学者なのかな?

ピカチュウの「ことば」ではない「音」を生徒に聞かせて感情を読み取る授業って、言語学と全く関係ないような・・・

 

逆に考えるんだ!
ポケモンの世界における言語学では「ことば」の定義が違うかもしれないのだ!
と考えるんだ。

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