ポケモンSVの言語学の授業は本当に「言語学」と言えるのか?

ポケモンSVには言語学の授業がある。

実際に(中国語で)受けてみたんだけど、なんだか本来の「言語学」とは違う気がする・・・

と思ったので記事化してみた。




前回の言語学のお勉強内容

ナンジャモちゃんを使って、「役割語」について説明した。

【ポケモンSV】ナンジャモちゃんのセリフを言語学における「役割語」で分析してみた

ポケモンの役割理論ではないですぞwww

ポケモンSVの言語学の授業って何?

「ことば」を扱う先生が出てくる

複数の外国語を同時に使う先生
「セイジ」と言う名前らしい。

 

わぁ!挨拶してくれたの!
本当に謝謝!

 

マイ ネーム イズ セイジ!
マイ ネーム イズ セイジだよ!

皆、真面目に授業に出席してくれて
本当に謝謝!サンキュー!

いろいろな国の「ことば」の存在を知る授業

パルテア地方なのに中国語とか日本語を使っている事には突っ込まない

 

グラシアス!メルシー!謝謝!
ダンケ シェーン!サンキュー!

 

これらは同じ意味だよ!知ってる人いる?

・さようなら
・ありがとう
・こんばんは

 

グラシアス!メルシー!謝謝!
これらすべて「ありがとう」の意味だよ!

 

デリシャス!好吃(hǎochī)!ブオノ!
これらの意味を知っている人いる?

・おいしい
・すみません
・助けて

 

デリシャス!好吃(hǎochī)!ブオノ!
これらすべて「おいしい」っていう意味なんだよ!

中間テストの内容

全部中国語だけど、日本人なら答えれそう。(適当)

1.以下の単語は全て同じ意味です。
どんな意味になるか回答して♡
・グラシアス
・サンキュー
・メルシー
・謝謝

 

2.「おいしい」の意味はどれになるか
以下から1個選んで♡
・グッド バイ
・デリシャス
・ヘロー

 

3.この中で、他のとは異なる意味になる単語を一個選んで♡
・アイラブユー
・ジュテーム
・テ アモ
・いただきます

 

4.相手にどのように接するのが
通じ合う事の第一歩になりますか?
・ほめる
・怒る
・溺愛する

 

はーい!テストはここまで!
ペンを机の上に置いてね!

ポケモンの鳴き声も扱う

ポケモンの「鳴き声」は「ことば」と言えるかどうかは疑問だが・・・

 

ピカチュウ「ピカ!」

 

さっきピカチュウが伝えたかったのは
一体どんな感情になるかな?

・うれしい
・悲しい
・ムカつく
・もう一回聞く

悲しい鳴き声

 

プリーズ!ピカチュウ!

ピカ……

元気がなさそうだね?
落ち込んだ音のように聞こえるね

さっきピカチュウが表現したかったのは
どんな感情になるかな?

うれしい
悲しい
驚いた
もう一度聞く

 

さっきのは、ピカチュウのカッコつけ‥‥
いや、ちょっとしたウソ泣きだよ!

嬉しい鳴き声

ピカチュウ!

もういい、ピカチュウ!
これが最後の発声テスト……

今の君の感情を我々に教えて!
プリーズ!

チィヤア~!

この音は、我々も思わず
感情が変わってしまいそうだね!

さっきピカチュウが表現したかったのは
どんな感情になるかな?

うれしい
つらい
驚いた
もう一度聞く

 

…は嬉しい気持ち!
これはうれしくなって踊りたくなる声だよ!

期末テストの内容

JR東西線さん、こんばんは!
期末テストを受ける?

 


以下の外国語は、どんな意味になるかな?
アイ ラブ ユー! ジュ テーム

・いただきます
・愛してる
・お家に帰りたい

 

ピカ!

リスニング試験。
ピカチュウが伝えたかった気持ちを選んで♡

・うれしい
・怒り
・悲しみ

 

チィヤア~!

リスニング試験。
ピカチュウが伝えたかった気持ちを選んで♡

・うれしい
・怒り
・悲しみ




言語学の授業を受けた語学マニアの感想

結論

語学マニアであり、言語学の知識がある私が(中国語で)授業を受けた感想は・・・

 


これって、どちらかと言うと心理学寄りじゃね


本来の「言語学」とは一体何か?

「言語学」は、「ことば」そのものを扱う学問。
正確に言うと「音」を扱う。

「文字」そのものを扱う学問もあるけど、「言語学」とは別の学問ね!

 

んで「言語学」では、人間の心の動き(=感情)は一切扱わない。

「言語学」が扱う「ことば」の内容を箇条書きしてみた。


・「ことば」を人間の口の器官を使って発声する方法
・「ことば」を「音」として他の人へ伝える方法
・他の人が発した「ことば」を耳で認識する方法
・認識した「ことば」から、意図を頭の中で理解する方法


 

上記を見ると、なんだかロボットみたいだなー
と冷酷に思われてしまうかもしれないけど、仕方ない。

 

「ことば」を聞いたことによって感じる「感情」まで扱うと、
それは純粋な「言語学」じゃなくなっちゃうの!

「心理学」って何?

「心理学」を簡単に言うと


ある刺激を受けた時、
人間(or 動物)の心の動きがどうなるのかを明らかにする学問。


 

んで、上記に述べた「ある刺激」は何でもいい。


・アイスクリームを舐める
・エッチな動画を見る
・「ンアッー!」という音声を聞く
・お尻ぺんぺんされる
・腐った魚の臭いをかぐ


 

上記のような刺激を受け取った結果、心はどのように変化したのかを数値化する実験をする。

これが「心理学」です。

なぜ「心理学寄り」と感じたのか?

セイジ先生の「言語学」の授業を心理学的に見ると、刺激は以下2つになる


・人の「ことば」
・ポケモンの「鳴き声」 (「ことば」ではない)


 

上記2つの刺激を受け取った結果、人間はどう感じるのか?

すなわち、心の動きにどのような変化をもたらすのか?
をセイジ先生の授業で解説している。

 

講義名は「言語学」なんだけど・・・
どちらかと言うと「心の動き」の方を重心的に解説しているなーと思った。

 

だからセイジ先生の授業は「心理学寄りだなー」と感じたのです。

「心理言語学」と言う学問がある

誤解しないで欲しい事

セイジ先生の授業は


「言語学ではない!けしからん」


とは一言も言っていない。

 

あくまでも「心理学」寄りだね~
という立場。

 

そもそも学問に区別は必要なのだろうか?
「哲学はすべての学問に通ずる」って言うし・・・

 

パルテア地方の世界は、たまたま「心理学」の分野が無いのかもしれない。

なので、学問の名前そのものにこだわる必要は無い。
大切なのは「何を学ぶか」だと思う。

「言語学」の幅は広い

学問と学問の間の境目は、本当に曖昧。
(そもそも学問名を区別する必要は無いと思うのだが)

 

例えば、言語学心理学はお互いに重なり合う部分がある。

 

言語学と心理学、どちらも似たような事をやっている分野があるんだよね。
たまたま似た事をやっている箇所を、とりあえず「心理言語学」と名付けられている。

 

セイジ先生のやっている授業は言語学と心理学が重なる部分、
すなわち「心理言語学」の所を学生たちに教えているんだなー

と言うのが私の認識

じゃあ、なんで授業名を「心理言語学」にしなかったの?

そもそも「心理言語学」という用語が一般的ではない。

知っているのは、言語学or心理学に詳しい変わり者人に限られる。

 

ゲーム内で授業名を付けるとしたら
「心理学」か「言語学」
のどちらかの一般的な用語に置き換えるべきだと思う。

 

で、セイジ先生は複数の外国語を扱うから
そのノリで授業名は「言語学」にしたろか!
「心理学」ではセイジ先生にとっては不適切だしな!

 

と言う理由で授業名が「言語学」になったのだと思う。

 

・・・考えすぎかな?
「言語学」の知識があると、余計に考えてしまうのよん

ピカチュウの鳴き声で学ぶ「ことば」の定義

ピカチュウの鳴き声は「ことば」ではない理由を言語学的に説明してみた