「過去」と「完了」の違いを区別できてない人が多いように思う。
なので、「過去」と「完了」の違いに注目しつつ、
ウェールズ語で「完了」を表す方法を説明する。
目次
前回の続き
「過去」と「完了」って何が違うの?
結論
「過去」と「完了」の違いを一般人にも分かるように説明しすると長文になるので
言語学用語を使ってズバッと言うと以下になる。
・過去 → 時制(テンス)の1つ
・完了 → 相(アスペクト)の1つ
ちなみに「相」は「そう」と読む。
占いの手相(てそう)とは関係ない!
時制(テンス)とか相(アスペクト)って何?
ここでは英語を例に紹介する。
ざっくり言うと以下のような分類になる。
・時制(テンス)→「過去」「現在」「未来」の3つがある。
・相(アスペクト)→「完了」「未完了」の2つがある。
上記は、あくまでも英語の例。
別の言語だと、また違った分類になる。
参考までに、日本語の時制は「非過去」「過去」の2つで区別する。
(「未来」という時制は無い)
えっと、要するに?
「過去」と「完了」は別物です!
現在よりも過去の時点である動作が行われた場合,
「時制」としては「過去」になる。
それに対して,ある動作がすでに完了した場合、
「相」としては「完了」になる。
「完了」だから、自動的に時制も「過去」になる訳ではないので注意!
ウェールズ語の場合、ある動作が「完了」しても
時制としては「現在」とか「未来」の可能性もあるよ!
今まで紹介してきた例文の時制・相を分析してみる
BOD構文を使った場合
「BOD構文」は
英語で言うbe動詞を使う構文だよ~
「現在形・未完了」の場合、以下のように書く。
Rydw i’n rhedeg
ラドゥ イン フレデグ
私は走っている
「過去形・未完了」の場合、以下のように書く。
Roeddwn i’n rhedeg
ロェズゥニン フレデグ
私は走っていました
「未来形・未完了」の場合、以下のように書く。
Bydda i’n rhedeg
バザ イン フレデグ
私は走るつもりです
今まで紹介してきた例文は、
どれも相(アスペクト)としては「未完了」になる。
時制(テンス)だけが変わっている。
ここでは、BOD動詞の変化形である
Rydw(ラドゥ)、Roeddwn(ロェズゥン)、Fydda(ヴァザ)
で「時制」を「現在」「過去」「未来」に切り替えているだけ。
※厳密には「現在」「線過去」「単純未来」
相(アスペクト)を変える働きは持っていないことが分かる。
屈折構文を使った場合
「屈折構文」は
英語で言うbe動詞を使わない構文だよ~
「過去形・未完了」の場合、以下のように書く。
Rhedes i
フレデスィ
私は走ったぞ!
「未来形・未完了」の場合、以下のように書く。
Rheda i
フレダ イ
私、これから走りますわ
今まで紹介してきた例文は、
どれも相(アスペクト)としては「未完了」になる。
時制(テンス)だけが「過去」「未来」変わっている。
※厳密には「点過去」「意思未来」
相(アスペクト)を変える要素は入っていない事が分かる。
(ちなみに、屈折構文の時制に「現在形」は) ないです。
どうすれば「完了」を表せるの?
前提条件
今まで紹介してきた例文は、
相(アスペクト)が「未完了」のみだった。
では、相(アスペクト)を「完了」にするためにはどうすればいいのか?
その前に前提条件がある。
「BOD構文」でなければならない!
「屈折構文」の場合「完了」は表せないようです。
助動詞を使えば「完了」も表せるらしい
相(アスペクト)が「完了」の例文
結論から言うと、主語の後にくっついている「’n(ン)」の部分を
「wedi(ウェディ)」に変えるだけ。
「’n(ン)」については以下を参考にして、どうぞ
「現在形・完了」の場合、以下のように書く。
Rydw i wedi rhedeg
ラドゥ イ ウェディ フレデグ
私は走り終えている
「過去形・完了」の場合、以下のように書く。
Roeddwn i wedi rhedeg
ロエズゥニ ウェディ フレデグ
私は走り終えてしまった
「未来形・完了」の場合、以下のように書く。
Bydda i wedi rhedeg
バザ イ ウェディ フレデグ
私は走り終えるだろう
ね?
時制(テンス)と相(アスペクト)をしっかり区別すれば、スッキリ整理できるでしょ?
誤解されやすい屈折構文の相(アスペクト)
屈折構文の過去形
先ほど紹介した例文をもう一度示す。
以下は「過去形・未完了」になる。
Rhedes i
フレデスィ
私は走ったぞ!
時制を厳密に言うと「点過去」
つまり「~したぞ!」を表す過去形になる。
「点過去」だから「完了」ではない
「~したぞ!」という日本語を見ると、
相(アスペクト)から見ると「完了」に見えてしまうよね?
だけど、相(アスペクト)としては「未完了」
「~したぞ!」という意味を持つ「点過去」は、
あくまでも時制(テンス)のグループに属する
「点過去」は相(アスペクト)のグループにはなれないのです。
まぁ、厳密には「時制」と「相」が複雑に絡み合うので
「グループになれないぞ!」とハッキリ断言できないのだが
それ以前に、私はウェールズ語の専門家ではない!
多くの読者が誤解すると思われる内容
屈折構文の過去形を使って「完了」を表現することはできない
「~したぞ!」という過去の「時制」を表す事はできるんだけどね・・・
ウェールズ語で相(アスペクト)が「完了」であることを明示したければ
「BOD構文」を使って「過去形・完了」の形に変えてあげる必要がある。
Roeddwn i wedi rhedeg
ロエズゥニ ウェディ フレデグ
私は走り終えてしまった
屈折構文の未来形でも同じ
まだ詳しく説明していないんですけど、
屈折構文の未来形は「~しちゃうぞ!」っていう未来の意思を表す表現になる。
だから相(アスペクト)が「完了」だ!
と考えたらダメ。
「~しちゃうぞ!」というのは、あくまでも日本語訳の一例
ウェールズ語で見ると「未来形・未完了」ですからね!
まとめ
いつも通り、3行で。
・屈折構文は「未完了」のみ
・BOD構文は「未完了」「完了」の両方を表せる
・「’n(ン)」→「wedi(ウェディ)」に変えると「完了」に変わる
※上記3行は相(アスペクト)の話です。時制ではありません。
なんでウェールズ語をこんなに細かく説明するの?
ここまで読んだ99%の読者の感想
ここまで読んでくれた兄貴は
「なるほど、さっぱりわからん」
「うわー、ウェールズ語ってなんだか難しそうだなー」
と絶望的になったかもしれない。
だから「言語学」という学問があるのです!
「言語学」と「語学」は別物
まぁまぁ、安心しなされ。
「言語学」と「語学」は全く別の分野。
「言語学」の知識があった方が「語学」の時にも有利なのだが・・・
別に「言語学」の知識が一切なくても「語学」はできるYO
言語を車に例えると?
・言語学=車を作るエンジニア
・語学=車を運転する一般人
普段から車を運転している人は、車の内部構造については詳しく知らない。
だけれども、マニュアル通りに操作すれば簡単に運転できる。
言語もマニュアル通りにやれば、だれでも使えるように作られている。
(そうでなければ、その言語はとっくに滅びている)
まぁ、その「言語のマニュアル」を理解するのに時間がかかるのだが。
文法は語学上達の近道
「学問に王道なし」
とよく言われるのだが、それでも「王道」っぽい手段はある。
語学なら「文法を覚えること」が「王道」かな?
「言語学」の知識、すなわち「文法」を覚えれば
「言語のマニュアル」を理解する時間を大幅に短縮できる。
なので、ウェールズ語文法を細かく説明してきた。
あまり細かく説明しすぎると挫折する人が増えるのだが
ワクワクできる人は語学の才能がある
本記事で説明した時制(テンス)とか相(アスペクト)を理解すれば、
もっと複雑なウェールズ語が読めるようになるぞ!
と思えばワクワクするよね!?
(それは他の外国語でも同じ)
え?ワクワクしない?
そ、そうですか・・・
逆に
「オラ、ワクワクすっぞ!」
と思える人は語学の才能があるよ!
(マジで)
ウェールズ語講座その31へ続く