ウェールズ語講座その30~動作の完了を表す方法

「過去」と「完了」の違いを区別できてない人が多いように思う。

なので、「過去」と「完了」の違いに注目しつつ、
ウェールズ語で「完了」を表す方法を説明する。




前回の続き

ウェールズ語講座その29~屈折構文を用いた過去の表現

「過去」と「完了」って何が違うの?

結論

「過去」と「完了」の違いを一般人にも分かるように説明しすると長文になるので
言語学用語を使ってズバッと言うと以下になる。


・過去 → 時制(テンス)の1つ

・完了 → 相(アスペクト)の1つ


知らないと恥ずかしい!アナタは文法上の「過去」と「完了」を区別してる?

ちなみに「相」「そう」と読む。
占いの手相(てそう)とは関係ない!

時制(テンス)とか相(アスペクト)って何?

ここでは英語を例に紹介する。

ざっくり言うと以下のような分類になる。


・時制(テンス)→「過去」「現在」「未来」の3つがある。

・相(アスペクト)→「完了」「未完了」の2つがある。


上記は、あくまでも英語の例。

別の言語だと、また違った分類になる。

参考までに、日本語の時制は「非過去」「過去」の2つで区別する。
(「未来」という時制は無い)

えっと、要するに?

「過去」「完了」別物です!

 

現在よりも過去の時点である動作が行われた場合,
「時制」としては「過去」になる。

それに対して,ある動作がすでに完了した場合、
「相」としては「完了」になる。

 

「完了」だから、自動的に時制も「過去」になる訳ではないので注意!

ウェールズ語の場合、ある動作が「完了」しても
時制としては「現在」とか「未来」の可能性もあるよ!




今まで紹介してきた例文の時制・相を分析してみる

BOD構文を使った場合

「BOD構文」
英語で言うbe動詞を使う構文だよ~

 

「現在形・未完了」の場合、以下のように書く。


Rydw i’n rhedeg
ラドゥ イン フレデグ
私は走っている


ウェールズ語講座その6~動詞を使った文

「過去形・未完了」の場合、以下のように書く。


Roeddwn i’n rhedeg
ロェズゥニン フレデグ
私は走っていました


ウェールズ語講座その11~過去(状態)の表現

「未来形・未完了」の場合、以下のように書く。


Bydda i’n rhedeg
バザ イン フレデグ
私は走るつもりです


ウェールズ語講座その12~未来(予定)の表現

今まで紹介してきた例文は、
どれも相(アスペクト)としては「未完了」になる。

時制(テンス)だけが変わっている。

 

ここでは、BOD動詞の変化形である

Rydw(ラドゥ)、Roeddwn(ロェズゥン)、Fydda(ヴァザ)

「時制」「現在」「過去」「未来」に切り替えているだけ。
※厳密には「現在」「線過去」「単純未来」

相(アスペクト)を変える働きは持っていないことが分かる。

屈折構文を使った場合

「屈折構文」
英語で言うbe動詞使わない構文だよ~

ウェールズ語講座その28~動詞はコロコロ変わる

「過去形・未完了」の場合、以下のように書く。


Rhedes i
フレデスィ
私は走ったぞ!


 

「未来形・未完了」の場合、以下のように書く。


Rheda i
フレダ イ
私、これから走りますわ


 

今まで紹介してきた例文は、
どれも相(アスペクト)としては「未完了」になる。

時制(テンス)だけが「過去」「未来」変わっている。
※厳密には「点過去」「意思未来」

 

相(アスペクト)を変える要素は入っていない事が分かる。

(ちなみに、屈折構文の時制に「現在形」は) ないです。

どうすれば「完了」を表せるの?

前提条件

今まで紹介してきた例文は、
相(アスペクト)「未完了」のみだった。

 

では、相(アスペクト)「完了」にするためにはどうすればいいのか?

その前に前提条件がある。

「BOD構文」でなければならない!

 

「屈折構文」の場合「完了」は表せないようです。

助動詞を使えば「完了」も表せるらしい

相(アスペクト)が「完了」の例文

結論から言うと、主語の後にくっついている「’n(ン)」の部分を
「wedi(ウェディ)」に変えるだけ。

「’n(ン)」については以下を参考にして、どうぞ

ウェールズ語講座その10~ynの用法まとめ

「現在形・完了」の場合、以下のように書く。


Rydw i wedi rhedeg
ラドゥ イ ウェディ フレデグ
私は走り終えている


 

「過去形・完了」の場合、以下のように書く。


Roeddwn i wedi rhedeg
ロエズゥニ ウェディ フレデグ
私は走り終えてしまった


 

「未来形・完了」の場合、以下のように書く。


Bydda i wedi rhedeg
バザ イ ウェディ フレデグ
私は走り終えるだろう


 

ね?
時制(テンス)相(アスペクト)をしっかり区別すれば、スッキリ整理できるでしょ?

誤解されやすい屈折構文の相(アスペクト)

屈折構文の過去形

先ほど紹介した例文をもう一度示す。

以下は「過去形・未完了」になる。


Rhedes i
フレデスィ
私は走ったぞ!


時制を厳密に言うと「点過去」
つまり「~したぞ!」を表す過去形になる。

ウェールズ語講座その29~屈折構文を用いた過去の表現

「点過去」だから「完了」ではない

「~したぞ!」という日本語を見ると、
相(アスペクト)から見ると「完了」に見えてしまうよね?

だけど、相(アスペクト)としては「未完了」

 

「~したぞ!」という意味を持つ「点過去」は、
あくまでも時制(テンス)のグループに属する

「点過去」は相(アスペクト)のグループにはなれないのです。

 

まぁ、厳密には「時制」と「相」が複雑に絡み合うので
「グループになれないぞ!」とハッキリ断言できないのだが

それ以前に、私はウェールズ語の専門家ではない!

多くの読者が誤解すると思われる内容

屈折構文の過去形を使って「完了」を表現することはできない

「~したぞ!」という過去の「時制」を表す事はできるんだけどね・・・

 

ウェールズ語で相(アスペクト)「完了」であることを明示したければ
「BOD構文」を使って「過去形・完了」の形に変えてあげる必要がある。


Roeddwn i wedi rhedeg
ロエズゥニ ウェディ フレデグ
私は走り終えてしまった


屈折構文の未来形でも同じ

まだ詳しく説明していないんですけど、
屈折構文の未来形は「~しちゃうぞ!」っていう未来の意思を表す表現になる。

だから相(アスペクト)が「完了」だ!
と考えたらダメ。

 

「~しちゃうぞ!」というのは、あくまでも日本語訳の一例

ウェールズ語で見ると「未来形・未完了」ですからね!

まとめ

いつも通り、3行で。


屈折構文「未完了」のみ

BOD構文「未完了」「完了」の両方を表せる

「’n(ン)」「wedi(ウェディ)」に変えると「完了」に変わる


※上記3行は相(アスペクト)の話です。時制ではありません。

なんでウェールズ語をこんなに細かく説明するの?

ここまで読んだ99%の読者の感想

ここまで読んでくれた兄貴は


「なるほど、さっぱりわからん」

「うわー、ウェールズ語ってなんだか難しそうだなー」


と絶望的になったかもしれない。

だから「言語学」という学問があるのです!

「言語学」と「語学」は別物

まぁまぁ、安心しなされ。
「言語学」と「語学」は全く別の分野。

「言語学」の知識があった方が「語学」の時にも有利なのだが・・・
別に「言語学」の知識が一切なくても「語学」はできるYO

言語を車に例えると?


・言語学=車を作るエンジニア

・語学=車を運転する一般人


普段から車を運転している人は、車の内部構造については詳しく知らない。
だけれども、マニュアル通りに操作すれば簡単に運転できる。

言語もマニュアル通りにやれば、だれでも使えるように作られている。
(そうでなければ、その言語はとっくに滅びている)

まぁ、その「言語のマニュアル」を理解するのに時間がかかるのだが。

文法は語学上達の近道

「学問に王道なし」

とよく言われるのだが、それでも「王道」っぽい手段はある。

語学なら「文法を覚えること」が「王道」かな?

 

「言語学」の知識、すなわち「文法」を覚えれば
「言語のマニュアル」を理解する時間を大幅に短縮できる。

なので、ウェールズ語文法を細かく説明してきた。
あまり細かく説明しすぎると挫折する人が増えるのだが

ワクワクできる人は語学の才能がある

本記事で説明した時制(テンス)とか相(アスペクト)を理解すれば、
もっと複雑なウェールズ語が読めるようになるぞ!

と思えばワクワクするよね!?
(それは他の外国語でも同じ)

え?ワクワクしない?
そ、そうですか・・・

 

逆に

「オラ、ワクワクすっぞ!」

と思える人は語学の才能があるよ!
(マジで)

ウェールズ語講座その31へ続く

ウェールズ語講座その31~屈折構文を用いた未来の表現