ウェールズ語講座その22~冠詞の使い方

前回は名詞について紹介した。

今回は名詞の前に付ける冠詞について紹介する




前回の続き

ウェールズ語講座その21~名詞の複数形

そもそも冠詞って何?

英語の「a」「the」が冠詞

例えば、boy(男の子)を例に挙げる。

 

「boy」の前に不定冠詞「a」を付けると・・・


a boy
(どうでもいい)男の子


 

「boy」の前に定冠詞「the」を付けると・・・


the boy
(世界に一人しかいない)その男の子


「a」と「the」って何が違うの?

「a boy」も「the boy」も「男の子」の点では共通している。

「男の子」が不特定なのか?特定なのか?
で違いがある。

 

「a boy」だと、不特定の男の子
たくさんいる男の子のうち、どうでもいい一人を指している。

一方「the boy」だと、特定の男の子になる
たくさんいる男の子のうち、唯一の男の子だけを指している。

冠詞に関する言語学用語の紹介

「定性」

「男の子」は「不特定」なのか?「特定」なのか?
を英語では区別する。

この考え方を「定性(ていせい)」と呼ぶ。

「不定」と「定」

更に2つの用語を紹介する。

 

「男の子」が「不特定」の場合、
すなわち「a boy」の場合は「不定(ふてい)」になる

「男の子」が「特定」の場合、
すなわち「the boy」の場合は「定(てい)」になる

ウェールズ語にも「定性」の考え方がある

ウェールズ語にも、英語の冠詞に相当する単語がある。
つまり、ウェールズ語も「定性」という考え方を持つ。

「男の子」が「不定」「定」のどちらかで、
単語の表し方が違うのです!

 

・・・ここまで理解できましたか?(小声)




ウェールズ語の場合の「定性」の表し方

基本的な考え方

2行でまとめると以下


・「不定」の場合→何もつけない

・「定」の場合→冠詞「y(ア)」を付ける


 

まぁ、実際は冠詞「y(ア)」の付け方が複雑なので、
上記だと説明不足なのだが・・・

足りない情報は説明しながら補足する。

「男の子」をウェールズ語で「bachgen(バハゲン)」と言う。
これを「不定」「定」でそれぞれ表現すると以下になる。

 

★「不定」の場合


bachgen
バハゲン
(どうでもいい)男の子


 

★「定」の場合


y bachgen
ア バハゲン
(世界に一人しかいない)その男の子


ウェールズ語には不定冠詞が無い

ウェールズ語の場合、冠詞を付けなれば「不定」になる。

つまり、英語の不定冠詞「a」みたいな単語を「男の子」の前に置く必要は無い。
と言うか、ウェールズ語に不定冠詞の単語なんてありません!

 

その代わり、「定」に対応した冠詞「y(ア)」はあるけどね。
(英語で言う「the」に相当する)

冠詞の形は変わる

冠詞「y」の別の姿

「定」を表現する場合の話ね!
(「不定」の説明ではない)

 

「定」を表す時、名詞の前に冠詞「y(ア)」を付ける。

この冠詞「y」は、他に2つの形がある。


・「yr(アル)」

・「’r(ル)」


つまり、ウェールズ語の冠詞「y」「yr」「’r」3通りある。
当然、使い分ける必要がある。

「yr(アル)」を使うケース

「学校」をウェールズ語で「ysgol(アスゴル)」と言う。
これを「不定」と「定」でそれぞれ表現すると以下になる。

 

★「不定」の場合


ysgol
アスゴル
(どうでもいい)学校


 

★「定」の場合


yr ysgol
アル アスゴル
(世界に一人しかいない)その学校


 

もし、冠詞「y(ア)」の後に来た名詞の最初が母音で始まると・・・

×:y ysgol(ア アスゴル)

母音「ア、ア」と続いて発音しにくい。

だから冠詞「y(ア)」の後に子音「r」をくっつけて

 

〇:yr ysgol(アル アスゴル)

で発音しやすいように工夫している。

 

英語でいうなら、冠詞the(ザ)でも、
後に来た単語によって(ジ)と発音するケースがあるね。

そういう文法がウェールズ語にもあると思えばOK!

「’r(ル)」を使うケース

先ほど紹介した「定」の表現

yr ysgol(アル アスゴル)
(意味:その学校)

 

の前に「~へ」を意味する前置詞「i(イ)」を置くと・・・

 

×:i yr ysgol(イ アル アスゴル)
(意味:その学校

母音「イ、ア」と続いて発音しにくい。

なので、今度は冠詞「yr(アル)」の母音の部分「y(ア)」を省略する。
つまり「yr(アル)」→「’r(ル)」にする。

 

〇:i‘r ysgol(イル アスゴル)
(意味:その学校へ)

まとめ

3行で

・「不定」の場合、冠詞は何もつけない

・「定」の場合、付ける冠詞は3パターンある(「y」「yr」「’r」)

・母音が連続しないように冠詞を使い分ける

これは「男性名詞」の話

これまで説明してきたのは、あくまでも名詞の性が「男性」の場合。

もし名詞の性が「女性」になると、更に面倒な文法が追加される。

これは次の記事で説明する。

ウェールズ語講座その23へ続く

ウェールズ語講座その23~女性名詞の場合の冠詞の使い方