ウェールズ語講座その25~「私の~」で学ぶ鼻音化

前回は軟音化(なんおんか)について説明した。

じゃあ、次は鼻音化(びおんか)について紹介しようか。




前回の続き

ウェールズ語講座その24~女性名詞で学ぶ軟音化

ウェールズ語は、どんだけ音変化があるんだよ!

大きく分けて3つ

音変化は大きく分けて3つに分類できる。


軟音化(なんおんか)

鼻音化(びおんか)

帯気音化(たいきおんか)


 

音変化のパターンを細かく見ると、18通りある。
そんなにあるのか・・・(汗

「軟音化(なんおんか)」のパターン

9パターンあるぞ!


p→b
t→d
c→g
b→f
d→dd
g→なし
m→f
rh→r
ll→l


「鼻音化(びおんか)」のパターン

6パターンあるぞ!


p→mh
t→nh
c→ngh
b→m
d→n
g→ng


「帯気音化(たいきおんか)」のパターン

3パターンあるぞ!


p→ph
t→th
c→ch


アイルランド語は「暗音化(あんおんか)」もある

ウェールズ語のお隣の言語で有名なアイルランド語「暗音化(あんおんか)」もある。

昔のサザエさんがゲール語(アイルランド語)の暗音化っぽい。

ウェールズ語学習者「へー、アイルランド語は暗音化もあるんだー」

アイルランド語学習者「へー、ウェールズ語は鼻音化や帯気音化もあるんだー」

一般人「‥何が何だか わからない‥」

 

念のために言っておくが、
ウェールズ語に「暗音化(あんおんか)」は無い!




鼻音化の概念を説明するゾ~

鼻音化(びおんか)の復習

前回は軟音化(なんおんか)の説明をした。

 

今回は鼻音化(びおんか)について説明する。

鼻音化の音変化は以下の6パターン。


p→mh
t→nh
c→ngh
b→m
d→n
g→ng


なんか「m」「n」「h」がやたらにくっつくく音変化だなぁ・・・

そもそも鼻音(びおん)って何?

簡単に言うと、口を閉じて鼻で発音をする音

日本語だと「な行」「ま行」「が行」の音に相当するらしい。

鼻音 – Wikipedia

鼻音(びおん)と化(か)する音って何?

日本語で言うと,
「な行」「ま行」「が行」以外の音が鼻音化(びおんか)の対象になるらしい。

ウェールズ語の場合だと
p,t,c,b,d,g
が鼻音化の対象になる。

 

ある音が鼻音化すると、
口だけではなくて鼻からも空気を通して発音される。

 

例えば「p」は口で息を吐きだす音
その「p」が鼻音化すると、口と同時に鼻からも息を出す。
その結果「p」→「mh」の音変化が起こる

 

この音変化をウェールズ語では鼻音化(びおんか)と呼ぶ。

韓国語にも鼻音化がある!

韓国語の発音の変化「鼻音化」|ハングルノート

韓国語の場合、以下4通りの鼻音化が起こる。


ㄱ(k)→ㅇ(ng)
ㄷ(t)→ㄴ(n)
ㅂ(p)→ㅁ(m)
ㄹ(r)→ㄴ(n)


 

韓国語に相当するウェールズ語の鼻音化は以下。


c→ngh  (※cは[k]の音)
t→nh
p→mh


※「r」は鼻音化しない。

 

ウェールズ語の方が「h」の音を付けて鼻音化する傾向が強そうだな~
(適当

鼻音化の例

表で整理してみた

鼻音化の例をズバッとまとめると以下になる。

「私の~」を示す語順

例えば「頭」という単語がある。

その「頭」の所有者が「私」であることを表現する場合、
「私の頭」と言う。
(当たり前のことを説明すると難しくなるね・・・)

 

ウェールズ語の場合、「頭」「pen(ペン)」と言う
英語の「ペン」じゃないよ!
ちなみに「ペン」はウェールズ語で「ysgrifbin(アスグリヴビン)」

 

んで、「pen(ペン)」の所有者が「私よ!」と言いたい場合、
「pen(ペン)」の前に「fy(ヴァ)」を付ける。

 

単語で並べると以下になる。


fy pen
ヴァ ペン


しかし、これだけでは不十分!

「私の~」が付いた単語は鼻音化

正確に言うと・・・

「fy(ヴァ)」の後に来た単語は鼻音化する
という面倒くさいルールがある。

 

以下の単語の並びの場合・・・


fy pen
ヴァ ペン


 

「fy(ヴァ)」の後に「pen」という単語が来ているので
「pen」鼻音化させる必要がある。


fy mhen
ヴァ ムヘン


これで、やっと「私のペン」と表現できる。

なんでこんなに面倒くさい事をやるの?

ウェールズ語には、言語の特徴の1つである恣意性(しいせい)を持つから!

 

・・・と言っちゃうのもアレなので、補足説明する。

簡単にまとめると「文法的機能を示す為」
でええやろ!(適当

 

ヨーロッパ言語の場合、名詞がいろいろな形にコロコロ変わっちゃう。

例えば、ポーランド語

「ペン」をポーランド語で「długopis(ドゥゴピス)」と言う。
「długopis」という形は、単数形だけ見ても以下のようにコロコロ変わる。


długopis
długopisu
długopisowi
długopis
długopisem
długopisie


wiktionary – długopis

一方、ウェールズ語の場合は名詞の形がほとんど変化しない。
変化するのは単数形・複数形だけ!(英語と同じ)

 

更に言うと、代名詞は変化しない!

英語の代名詞としてI(私は~)me(私を~)がある。
これらをウェールズ語で言うと、全部「i(イ)」になってしまう!

 

ウェールズ語は、英語以上に名詞や代名詞の変化が失われている。
だからこそ、語順がより大切になってくる!
(中国語でよくあるセリフ)

 

でも、いくらなんでも語順だけで文法的機能を示すのは大変じゃね?
中国語みたいに漢字が無いんだし・・・

なんか他の目印が欲しいなぁ~

と思って目を付けたモノの1つが「音変化」

 

例えば「私の~」の後に付いた名詞。
これを強調するためにはどうすればいいのかなぁ~

そうだ!名詞を「鼻音化」させちゃえばいいんじゃね?

 

・・・という事を、昔のウェールズ人は考えていたのかもしれない。

まぁ、これはあくまでも私の想像。

ウェールズ語と言語学の知識があると、
こんな風に色々と妄想できるのが語学マニア

まとめ

3行で整理すると以下


・音変化を大きく分けると3つに分類できる

・鼻音化だけ見ると6パターンある

・「私の」の後に来た名詞の最初の子音が鼻音化する


ウェールズ語講座その26へ続く

ウェールズ語講座その26~帯気音化の紹介