ポーランド語の勉強をしていると、どうしてもロシア語と比べたくなる。
そんな語学マニア向けにオススメなのが、ガルパンで出てくる「カチューシャ歌詞」
そのロシア語とポーランド語で知的好奇心を満たしましょう!
目次
カチューシャ歌詞って何?
以下記事を読んで♡
「ロシア語」と「ポーランド語」ってどんな言語なの?
ロシア語が↓
ポーランド語が↓
ある外国語を説明する時は,「あぁ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~」記事が役に立つ。
本記事でとりあげるロシア語とポーランド語
歌詞の一行だけ紹介
カチューシャ歌詞の全てをロシア語とポーランド語で並べると、ものすごく説明が長くなる。
なにより、ロシア語やポーランド語を知らない人(=スラヴ諸語の知識が無い人)にとっては難解な内容になると思う。
なので、本記事ではカチューシャ歌詞の2行だけをピックアップしてロシア語とポーランド語を比べてみる。
紹介するロシア語とポーランド語
ロシア語(原文)が↓
Выходила на берег Катюша
На высокий берег на крутой
ヴィハヂーラ ナベーリク カチューシャ
ナ ヴィソーキィ ベーリク ナクルトーイ
カチューシャは川岸に歩み出た
高く険しい川岸に
↑のロシア語をポーランド語に訳したのが↓
ku brzegowi szła Kasieńka błoniem
ku brzegowi wysokiemu szła
クブジェゴヴィ シュワ カシエィンカ ブウォニエム
クブジェゴヴィ ヴィソキエム シュワ
若いカチューシャは歩み行く(※原文ロシア語と少し訳が異なる)
高く険しい川岸に
ガルパンのロシア語+ポーランド語版をお楽しみ下さい
画像の上側にある意味不明な文字で書かれているのがロシア語
画像の下側にある、英語と(大体)同じ文字で書かれているのがポーランド語
1行目
【ロシア語】Выходила на берег Катюша
【ポーランド語】ku brzegowi szła Kasieńka błoniem
2行目
【ロシア語】На высокий берег на крутой
【ポーランド語】ku brzegowi wysokiemu szła
ロシア語とポーランド語の解説
ロシア語
まず、原文のロシア語から紹介する。
前に紹介したロシア語から強く読む文字の上に「/」を付けた。
「/」が付いている文字は「長ーく読む」と思ってくれ
Выходи́ла на бе́рег Катю́ша
На высо́кий бе́рег на круто́й
ヴィハヂーラ ナベーリク カチューシャ
ナ ヴィソーキィ ベーリク ナクルトーイ
カチューシャは川岸に歩み出た
高く険しい川岸に
まずロシア語を知らない人は、あのロシア文字(=キリル文字)が全然読めないだろう。
なので、読み方はカタカナ読みを参考に欲しい。
ロシア語文法で説明すると以下になる。
↑のロシア語で使われている「На」は「~へ」の意味を持つ。
英語で言うなら「to」
「На」の後に来る名詞や形容詞は「対格(~を)」っていう形になる。
「На」の後に来る名詞「бе́рег(川岸)」は子音「г」で終わっているから男性名詞
更に「川岸」生き物ではないから男性・不活動体と分かる。
男性・不活動体名詞の場合、「対格(~を)」は名詞の基本形(=主格)と同じ形になる。
更に形容詞「высо́кий(高い)」は(略
・・・とまぁ、こんな風にロシア語学習者は一瞬で理解しながら読んでいる。
改めて考えると、ロシア語学習者ってすごくね?
ロシア語学習者はおそロシア~
ポーランド語
一方、ポーランド語は英語と同じ文字を使う。
なのでビビる人は少ないはず!
ku brzegowi szła Kasieńka błoniem
ku brzegowi wysokiemu szła
クブジェゴヴィ シュワ カシエィンカ ブウォニエム
クブジェゴヴィ ヴィソキエム シュワ
若いカチューシャは歩み行く(※原文ロシア語と少し訳が異なる)
高く険しい川岸に
え?「ł」や「ń」が出ているって?
こまけぇこたぁいいんだよ!!
ポーランド語文法で説明すると以下になる。
↑のポーランド語で使われている「Ku」は「~へ」の意味を持つ。
英語で言うなら「to」、ロシア語で言うなら「На」
ポーランド語にもロシア語の「На」に相当する「na」がある事は内緒
「Ku」の後に来る名詞や形容詞は、「与格(~に)」っていう形になる。
※今回のロシア語原文は「対格(~を)」の形
「Ku」の後に来る名詞「brzegowi(海岸線)」は「単数・与格」という形になっています。
元の形(=単数・主格)はbrzeg(ブジェク)
子音「g」で終わっているから男性名詞
厳密に言うと、ロシア語と同じ「男性・不活動体名詞」なのだが・・・
今は「与格(~に)」を考えているので「不活動体」は無視できる。
ポーランド語の男性名詞を「与格(~に)」の形にするためには、
元の形(単数・主格)に「owi」の文字をくっつける。
これで、やっと「ku brzegowi(海岸線へ)」と表現できる。
更に形容詞「wysokiemu(高い)」は(略
・・・とまぁ、こんな風にポーランド語学習者は一瞬で理解しながら読んでいる。
改めて考えると、ポーランド語学習者ってすごくね?
ポーランド語学習者はおそロシア~
いや、おそランドか。
カチューシャ歌詞におけるロシア語とポーランドの比較言語学
今までの説明内容はウォーミングアップにすぎない。
ここから本番です。
歌詞の一部から読み取れること
ロシア語とポーランド語の違いを表で整理すると以下になる。
たった「2行」のロシア語とポーランド語でも、相違点がたくさん見つかるんですYO!
↑の表に対する色々な人の反応
一般人「何が何だかわからない」
スラヴ諸語を知らない語学マニア「な、なんとなく分かるぞ(震え声)」
ロシア語学習者「へー、ポーランド語の過去形・女性・単数は「ła」なのかー」
ポーランド語学習者「ロシア語の接頭辞[Вы]って、ポーランド語の[Wy-]と似てるな~」
スラヴ諸語の専門家たち「これくらい分かって当然。論文に値しないゴミ情報」
本記事で取り上げる比較項目
私が本記事を書いたキッカケは、ポーランド語の動詞
szła(彼女は言った)
である。
なので、「過去時制における動詞の活用」のみに絞って比較言語学(ごっこ)を行う。
子供がやる「ままごと遊び」の感覚で読んで欲しい
動詞の過去時制をロシア語とポーランド語で比較してみた
「彼女は行った」という動詞のロシア語とポーランド語を表でまとめると以下になる。
Wiktionary выходи́ть
Wiktionary iść
↑の表に対する色々な人の反応
一般人「時制、人称、数、性しか分からない・・・」
スラヴ諸語を知らない語学マニア「へー、ロシア語は移動方向も気にするのかー」
ロシア語学習者「ポーランド語の動詞過去形は人称変化もあるのか!面倒臭いな~」
ポーランド語学習者「うわっ…ロシア語の動詞過去形の活用、少なすぎ…?」
スラヴ諸語の専門家たち「ほ~ん。それで?」
過去形の活用だけに注目!
本記事では、動詞の全てのカテゴリを扱わない。
赤枠の部分だけに着目して比較するよ!
今回はポーランド語の「szła」を基準にして比較する。
ポーランド語「szła」の基本形(=不定詞)は「iść(イシチ)」
それに相当するロシア語の基本形が「идти́(イッチー)」
(念のために言うが、「イッチー」は人名ではない!ロシア語の発音です)
動詞「iść」と「идти́」の過去形における活用は以下になる
英語しか知らない人から見たら、過去形だけでも恐ろしく活用するように見えるが・・・
ヨーロッパ言語の中では活用が少ない方です。
フランス語とかは本当に過去形の活用が地獄だぞ・・・
ポーランド語の「szła」だけでも色々な妄想ができる
話を戻す。
私が本記事を書いたキッカケは、ポーランド語の動詞
szła(彼女は行った)
と言った。
実はね・・・
「彼女は行った」という動詞を先に覚えたのがポーランド語の「szła」なの!
ポーランド語よりも前にロシア語も勉強していたんだけど・・・
動詞の過去形なんてさーっぱり忘れちゃった。テヘッ!
んで、ロシア語を改めて学び直した。
すると、ポーランド語の「iść(行く)」に相当するロシア語が
идти́(イッチー)
だと分かった。
ここで、ポーランド語の知識がある私は頭が「ピーン!」ってなった。
以下表の赤枠だけに着目すると・・・
ロシア語の「шла́(彼女は行った)」ってさ、
なんだかポーランド語の「szła」に似てないか?
ロシア語の「шла́」をポーランド語風に書くと「szla」
つまり
ロシア語「szla」=ポーランド語「szła」
なるほど、ロシア語の「l(エル)」の部分がポーランド語では「ł(ウ)」になっているんだな!
ポーランド語の「l(エル)」と「ł(ウ)」は子音交替の関係だから、なんだか面白いな!
と一人で興奮していた。
周りの人から見みると、ニヤニヤしているおっさんにしか見えないだろうな。
まとめ~言語学者は頭がおかしい人だらけ~
言語学者は言語の事しか考えていない
語学マニアや言語学者は、たかが
ポーランド語の「szła」とロシア語の「шла́」
だけで何時間も語れる。
ロシア語やポーランド語(=スラヴ諸語)の専門家なら、ガチになって調査する。
今回の例と同じようなロシア語+ポーランド語単語をコーパスから集める。
集まった膨大なデータ量から「szła」「шла́」と同じような特徴が見られる単語をリストアップする。
リストアップした結果から、言語学的な考察をして
「ロシア語とポーランド語の動詞過去時制における活用の比較」
というタイトルの論文まで書いてしまう。
一般人から見た言語学者の意見
普通の人から見ると、こう言うだろう。
「そんな事を研究してなんの役に立つのwww?」
そう言って呆れるだけ。
だけど言語学者は一般人の意見なんて気にしない。
(と言うか一般人の考えなんて頭に無い)
自分の言語学的な知的好奇心を満たすため「だけ」の目的で、
ロシア語とポーランド語について徹底的に調べる。
これが言語学者です。
言語学者に近づく為には?
私は言語学者ではない。
ごく一般の会社で働くヒラ社員。
そんな私でも、いつかは
「ロシア語とポーランド語の動詞過去時制における活用の比較」
みたいなガチの言語調査をしてブログにアップしたい!
という野心を密かに持っている。
実際、ネットでggってもロシア語とポーランド語における比較言語学みたいな情報が無い。
むしろ
「ロシア語とポーランド語はどっちが難しい?」
という低レベルの記事ばかり・・・
じゃあ、オレがロシア語とポーランド語を比較して、その調査をブログにアップすればええやん!
そのためにはロシア語とポーランド語の知識が必要になる!
だから私はロシア語とポーランド語を勉強しているんです。
外国語を言語学的な視点からアプローチしようとすると、どうしても語学力が必要になる。
そういう目的で外国語を勉強するのもアリかな?
と思います。
関連記事:私がポーランド語にこだわる理由
ロシア語はスラヴ諸語におけるメジャー言語だから分かる。
だけど、なぜポーランド語なの?
チェコ語やウクライナ語ではダメなの?
と思っている兄貴は以下記事を読んで、どうぞ。