ヘブライ語の単語をイディッシュ語表記で書いてみた

ヘブライ語とイディッシュ語は、どちらも同じヘブライ文字を使う。
しかし、母音表記の面で大きな違いがある。

その違いを整理してみた。




この記事を理解する為の前提知識

ヘブライ文字は右から左へ向かって読む

アラビア語は、日本語や英語とは逆に右から読む言語として有名(かもしれない)

「あぁ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~」のアラビア語訳を修正してみた

 

ヘブライ文字を使う言語も、右から読む。

例えばイディッシュ語で書かれたwikipedia記事の最初は以下のようになる。

יידיש

読む方向は ←←←← だよ!

ヘブライ文字には母音記号がある

ヘブライ文字は、基本的に子音だけで書き表す(←そこ重要)
(アラビア語と同様)

「こころぴょんぴょん」のヘブライ語訳を分析してみた

 

その為、ヘブライ語やイディッシュ語学習者から見ると

母音が分かんねぇ~

ってなる。

 

その為、ヘブライ文字に母音記号を付けて学習者でも読めるようにした。
その母音記号を「ニクダー」と呼ぶ。

※「ニクダー」は厳密には母音だけでなく、子音の識別にも使われる。
(例:shとs)

逆に母音記号が無いヘブライ文字の表記を、本記事では「白文」と呼ぶ。
「白文」の由来は漢文ね!

「あぁ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~」の漢文を分析してみた

 

ヘブライ語やイディッシュ語のネイティブは「白文」で読み書きする。
フリガナの無い漢字を使うような感覚。

 

一方、母音記号が付いたヘブライ文字は子供や外国語学習者向けに書かれている物と思ってほしい。
(これはアラビア語でも同じ)

現代ヘブライ語には「満ちた表記」と「欠けた表記」がある

先ほどは「白文」と「母音記号あり」の2種類のヘブライ文字表記を紹介した。

 

現代ヘブライ語の場合、更に2つの表記方法に分類される。
それが「満ちた表記」「欠けた表記」

表で整理すると以下になる。

 

母音記号を使ってヘブライ文字を書く場合、「欠けた表記」になる。
なぜなら、母音を示すヘブライ文字が不要だから。

母音があれば、「i」を表すヘブライ文字「י」をわざわざ書く必要は無い。
こんな風に、母音を示すヘブライ文字が省略された表記を「欠けた表記」と呼ぶ。

 

逆に、母音記号が無い代わりに母音を示すヘブライ文字を付けた表記を「満ちた表記」と呼ぶ。

 

現代ヘブライ語の場合は「母音記号なし」かつ「満ちた表記」で記述されるのが普通。

ちなみにイディッシュ語の場合、「満ちた表記」「欠けた表記」の区別は無い。

そうだ!イディッシュ語、勉強しよう(提案




本記事で扱うヘブライ語とイディッシュ語表記

ヘブライ語は「母音記号なし」かつ「満ちた表記」

要するに、ヘブライ語のネイティブ向けの表記。

 

理由はニューエクスプレスの現代ヘブライ語。
このテキスト文にあるヘブライ語は「母音記号なし」+「満ちた表記」で書かれている為。

逆に「母音記号あり」+「欠けた表記」でヘブライ語を書く方法は私には分かりません・・・
(ニューエクスプレスの古典ヘブライ語を読めば分かるかも?)

イディッシュ語は「母音記号あり」

要するに、イディッシュ語学習者向けの表記。

理由は、上田和夫氏の「イディッシュ語文法入門」より。
文献は本記事の最後に示す。

 

まぁ、本記事はヘブライ語ではなくイディッシュ語学習が目的なので・・・

ヘブライ語とイディッシュ語でスペルが同じになるケース

スペルが同じになった代表例

元の単語はヘブライ語。
それをイディッシュ語表記にした結果、偶然にスペルが一致した単語が以下。
(※イディッシュ語訳ではありません。念のため)

なお母音記号は除いた、純粋なヘブライ文字のみで比べている。

スペルが同じになる理由を分析

イディッシュ語とヘブライ語の発音ルールを整理してみた。


赤字が、共通する発音の部分。

上記の表から分かるように、ヘブライ語の発音はかなり揺れがある。

アラビア語やヘブライ語のような、母音を文字で表記しない言語を勉強した事の無い人から見ると

同じ文字なのに、こんなにたくさんの発音パターンがあるのか!?

ってビックリするかもしれない。

 

ヘブライ語を挫折した私から言わせてもらうと、ヘブライ語を「白文」で読むのはマジでキツイ。
単語の意味が分からない以前に、ヘブライ文字の音が類推できない。


・これは母音なの?子音なの?バカなの?

・この文字は子音のみ発音?(母音なし)

・これは無音でいいんだよな?

・母音だとして、ア、イ、ウ、エ、オのどれ?


っていう風に悩むのがヘブライ語(+アラビア語)学習者あるある

 

一方、イディッシュ語の方はヘブライ語と比べて発音の揺れが少ない。
それでも、ヘブライ文字だけ(=白文)で100%発音が分かるわけではないのだが・・・

 

まぁ、とりあえずヘブライ語とイディッシュ語で「たまたま」母音の読み方が共通していれば、スペルも同じになるね。

ヘブライ語とイディッシュ語でスペルが異なるケース

手書きで書いてみた

たくさんあって、PC入力が面倒なので手書きの一部を示す。

ざっと眺めてみると、イディッシュ語の方がスペルが長いなぁ~
という印象

なぜイディッシュ語の方が綴りが長くなるのか?

ヘブライ語とイディッシュ語では、言語グループ(語族)が異なるのが大きな理由だと考えている。

簡単に言うと、以下のようになる。


イディッシュ語 = 英語やドイツ語の親戚

ヘブライ語 = アラビア語の親戚


 

ヘブライ語の場合、「3語源」の考え方がある。

要するに、3つのヘブライ文字だけ使って単語を表そう!
っていう考え方が強い。

 

例えば「本」と言う単語で例を挙げる。

ヘブライ語の場合は3文字で済むが、イディッシュ語表記にすると5文字も必要になる。

ヘブライ語の3文字は全部子音で、母音「e」が隠れている。
3つのヘブライ文字で表したいから、母音「e」を省略しちゃっている。

 

一方、イディッシュ語は英語やドイツ語の親戚。

英語を書くときは、母音を全部書き表すよね?
イディッシュ語も英語と同様に、母音を省略せずに全部書く!

母音をいちいち全部書くため、ヘブライ語よりもスペルが長くなってしまうのかなーって思う。

参考文献

ニューエクスプレスプラス 現代ヘブライ語 山田 恵子 著

イディッシュ語文法入門 上田 和夫 著