ウェールズ語講座その32~主語が無い文の作り方

ウェールズ語の場合、1つの文に1つの主語を明示する必要がある。

だけど動詞の非人称形を使えば、主語が無い文も作れる。




前回の続き

屈折構文を使った未来の表現

ウェールズ語講座その31~屈折構文を用いた未来の表現

今までは主語が必ず存在した

今まで紹介してきたウェールズ語の例文は「主語」をハッキリと示していた。

一部は主語を省いた例文もあるのだが・・・
動詞の形から主語が分かる。

ウェールズ語って、英語と同様に「主語」にうるさい言語なんですね・・

主語が無い文の作り方

例文

「メイド・イン・チャイナ」のウェールズ語版が以下。


Gwnaed yng Nghymru
グゥナエド アングハムリ
ウェールズ製、ウェールズ産


Gwnaed(グゥナエド)=作られた

これが、本記事のメインである「動詞の非人称形」

元の動詞の形はgwneud(グゥネイド)
「作る」の意味がある。

これを非人称形にしたのがGwnaed(グゥナエド)

正確に言うと「非人称・過去形」の形になる。

 

※「非人称・非過去形」もあります

yng(アング)=~の中に

元の形はyn(アン)

「~の中に」を意味する前置詞。

詳細は以下を読んで、どうぞ。

ウェールズ語講座その10~ynの用法まとめ

Nghymru(ングハムリ)=ウェールズ

あらかじめ言っておくが・・・
「Nghymru」が「ウェールズ」と思ってもらっては困る!

 

「ウェールズ」は、ウェールズ語で「Cymru(カムリ)」と言う。

この前に前置詞「yn(アン)」が来ている。
すると、その後に来た単語が鼻音化(びおんか)する。

鼻音化は、前にも説明したゾ~
忘れた兄貴は以下を読んで復習して、どうぞ。

ウェールズ語講座その25~「私の~」で学ぶ鼻音化

「Cymru(カムリ)」の場合、最初に始まっている子音は「C」

それが鼻音化すると

C→Ngh

の音変化が起こる。
よって、

Cymru→Nghymru

のように変わる。

鼻音化につられて「yn」も変わる

先ほど、「Cymru(カムリ)」鼻音化すると説明した。

その時、「~の中に」を意味する前置詞「yn(アン)」の形も変わる。

yn→yng

 

まとめると・・・

「yn」+「Cymru」→「yng」+「Nghymru」

のような音変化が起こる。

・・・まぁ、本記事のメインは動詞の非人称形だけどな。




動詞の非人称形って何?

そもそも「非人称」って何だよ!(哲学)

日本で普通に暮らしている人なら、
「非人称」という言葉を見る機会は無いと思う。

学生時代の時に、英語の授業で「非人称」という文法用語を聞いたっけ?
っていう程度かな?

 

さて、
「非人称」を簡単に言うと「人称が無い文」
要するに「主語がハッキリしない文」

 

英語で言うなら「It rains(雨が降る)」の例文が有名。

「It(それ)」は、あくまでも仮の主語
主語が何なのかは、誰にも分からない。

こういう文は「非人称」の文法に属する。

 

・・・ここまでOKですか?

一般人から見るとなんだが難しい事ばかり言っている気がする
外国語を言葉で説明するのって難しい

ウェールズ語における非人称文

もう一度、ウェールズ語の例文を見てみようか。


Gwnaed yng Nghymru
グゥナエド アングハムリ
ウェールズ製、ウェールズ産


Gwnaed(グゥナエド)「動詞の非人称形」になっている。
(元の形はGwneud

日本語だと
「(ハッキリ特定できない誰かによって)作られた」

のような意味になる。

英語における非人称文

一方、英語だと・・・


Made in Wales
メイド イン ウェィルズ


この「Made」「~で作られた」の意味を持つ形容詞
(動詞の過去形ではない)

もっと詳しく見ると、原形「Make」の過去分詞になっている。
過去分詞を「形容詞的用法」として使うと「~された」の意味になる。

 

ウェールズ語みたいに「動詞の非人称形」になっていないね・・・

英語には「動詞の非人称形」が無いらしい。
なお、昔の英語は非人称形があった模様。

「こころぴょんぴょん」の古英語を分析してみた

ウェールズ語と英語を比べてみる

「ウェールズで作られた商品」と表現したい場合、


ウェールズ語→動詞の非人称形

英語→動詞の過去分詞(=形容詞)


要するに、
ウェールズ語は動詞を使うのに対して
英語は形容詞を使って「~製」と表現している。

まぁ、絶対にこの文法を適用せよ!
という訳ではないのだが・・・

「~製」は、言語によっていろいろな表現方法があるんだなー
という風に思ってもらえればOK

他にも形動詞があるのだが・・・

形動詞って何?

先ほど説明した、動詞の過去分詞(=形容詞)みたいなモン。

動詞の形が変化して形容詞の働きをするようになったのが「形動詞」
ロシア語のような言語でたくさん出て来るらしい。

「あぁ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~」のロシア語訳を分析してみた

gwneud(グゥネイド)の形動詞は?

「作る」という意味を持つ動詞「gwneud(グゥネイド)」「形動詞」

gwneuthuredig(グゥネイスィレディグ)

になるらしい。
なんか長い形だなぁ~

これは、動詞の非人称形と同様に「作られた」の意味を持つ。

形動詞で「~製」と表現できるのか?

結論:ウェールズ人に聞いて、どうぞ(説明放棄)

 

私としては以下の文の可能もあると思うのだが・・・
(間違った文だと思うが)


Gwneuthuredig yng Nghymru
グゥネイスィレディグ アングハムリ
ウェールズで作られた


 

だけど、形動詞よりも動詞の非人称形を使った方が自然らしい。
(とgoogle先生は言っている)


Gwnaed yng Nghymru
グゥナエド アングハムリ
ウェールズ製、ウェールズ産


要するに、ネット検索して出てきた単語をそのまま使って作文すると
(ネイティブから見て)とんでもない文になるよ!

って事。

 

まずは教科書や辞書に書かれている例文を覚えよう(提案)

なお、今回紹介した例文「Gwnaed yng Nghymru」
「ウェールズ語ー英語辞書」からそのまま抜き出しただけ。

マイナー言語の中級以上の語学書=辞書という話

まとめ

3行で


・主語がハッキリしない文を「非人称文」と呼ぶ

・「非人称文」専用の動詞の形がある

・形動詞?知らない子ですね。


ウェールズ語講座その33へ続く

ウェールズ語講座その33~感嘆の表現