ウェールズ語で軟音化(なんおんか)が起こるケースを整理してみた

ウェールズ語には、3つの音変化がある。
その内、最もよく出てくる「軟音化(なんおんか)」はどんな時に起こるのか、一般人にも分かるように説明してみた。

説明を読んでもイミフってなったら、すいません許してください!何でもしますから!




軟音化(なんおんか)って何?

単語の最初の子音が変化する現象

要するに、人間の口の中で発音しやすくするために音を変えているだけ
ウェールズ語に限らず、他の言語でも同じ現象が見られるゾ~

 

その音変化の1つが軟音化(なんおんか)

ウェールズ語講座その24~女性名詞で学ぶ軟音化

あっ、そうだ(唐突)
軟音化(なんおんか)は、語学書によっては軟変異(なんへんい)と書かれる事もあるゾ~

今後は、軟音化(なんおんか)で統一してイキますよ~イクイク~
ヌッ

発音時の息が弱くなる現象=軟音化

例えば、特定の位置にある子音[K]だと発音がダルイぃぃぃぃ!
じゃあ、そこの子音[K]だけ[K→G]に変化させたろか!

…っていう音変化を、ウェールズ語文法では「軟音化」を読んでいる。

 

例えば日本語の「手紙」「てみ(TeKaMi)」ではなく「てみ(TeGaMi)」と発音する。
母音eの後に子音Kが来ると発音しにくいから、子音をK→Gに変化させているゾ~

 

子音Kは、「無声音」
のどを振動させる必要が無いので、息を強く吐き出して発音できる。

逆に子音G「有声音」
のどを振動させる必要があるので、肺から吐き出された空気が振動に邪魔されて息が弱くなる

 

まとめると


子音K→無声音(強く息を吐く)
子音G→有声音(息は弱くなる)


 

子音が k(無声音)→g(有声音) に変化して、息が弱くなりますよ~

っていうのが軟音化

 

ちなみにウェールズ語のスペルで書くと「c→g」に相当する。
(kは外来語以外使わ)ないです

どういう時に軟音化が起こるの?

結論

大雑把に言うと、以下の6つになる(と思う)


・概念上の主語の後に来た単語

・女性名詞・単数形の後に来た単語

・特定の単語の後

・屈折構文で使われる、文の先頭の動詞

・名詞から「時間の副詞」を作る場合

・2語以上から成る合成語を作る時の、後ろの単語


なるほど、さっぱりわからん

…ってなる兄貴が全国に114514人居ると思うんで、例を挙げて1つ1つ説明するゾ~

 

ここからは本格的なウェールズ語文法に入るので
(語学マニア以外はたぶん理解できない)ないです

ええんやで(ニッコリ)
っていう兄貴は、鼻くそボジボジしながら読んで、どうぞ。

概念上の主語の後に来た単語

「概念上の主語」とは、まぁ要するに「大きな主語のかたまり」と見なせる部分

 

有名なのは、rhaid(フライド)を使った義務の表現
フライドチキンではない Not fried chicken

 

Rhaid i Dafydd fynd
ダヴィズは、行かなければならない

の最初の3語

Rhaid i Dafydd
(~しなきゃダメよ♡ / ~へ / ダヴィズ)
の部分が「概念上の主語」

 

略せずに長く書いた場合、
Mae’n rhaid i Dafydd fynd

この場合、
Mae’n rhaid i Dafydd
の部分が「概念上の主語」

 

その「概念上の主語」の後に、動詞の基本形を置く事ができる。
(こーゆー動詞を「動詞的名詞」って呼ぶ)

 

んで、その動詞の語頭m→f軟音化する。
だから「行く」を意味する動詞myndfyndへ変化させる必要があったんですね。

 

あっ、そうだ(唐突)
「概念上の主語」rhaid(フライド)を使った義務の表現だけでは無いゾ~

屈折構文の文頭に来た「(動詞前虚詞+)動詞+主語」「概念上の主語」と見なせる事に注意ゾ~

ウェールズ語講座その29~屈折構文を用いた過去の表現

Fe welodd Sioned gath
ショネドさんは、猫を見た

Fe welodd Sioned
(動詞前虚詞 / 彼女は見た / ショネドさん)
の部分が「概念上の主語」

「概念上の主語」の後に来た名詞cath(猫)の語頭が c→g へ軟音化する

つまり
cath → gath
になる。

女性名詞・単数形の後に来た単語

名詞が男性とか複数形の場合は、このルールは無視できる。

 

ただし「女性・単数」テメーはダメだ!

その後に来た単語は軟音化するゾ~

 

例えば、「星の王子様」はウェールズ語だとになる
Y Tywysog bach
(その / 王子 / 小さい)

「星の王子様」の最初の段落をウェールズ語で朗読してみた

Y Tywysog(その王子)は、男(漢)なので…
後に来た単語は軟音化しない

 

では、性別を「男→女」に変えて「星の王女様」にするとどうなるのか?
Y Dywysoges fach
(その / 王女 / 小さい)

 

Y Dywysoges(その王女)は、なので…
後に来た単語の語頭が b→f軟音化するッ!

つまり
bach → fach
になる。




特定の単語の後

先ほどの「星の王女様」をもう一度挙げる
Y Dywysoges fach
(その / 王女 / 小さい)

 

「その」を意味する定冠詞Y
の後に来た名詞が「女性・単数」の場合、軟音化する

 

「王女様」の元の形Tywysoges

「プリンセス・オブ・ウェールズ」のウェールズ語を文法的に説明してみた

女性名詞Tywysogesの前に定冠詞Yが来ると…

Tywysoges t→d軟音化する。

つまり
Tywysoges → Dywysoges
になる。

 

このように軟音化を起こす「特定の単語」Yだけではないッ!
他にもたくさんあるゾ~


un =1(女)
dau =2(男)
dwy =2(女)

dyma =ここに~
dacw =あそこに~
dyna =あそこに~

dy =君の
ei =彼の(「彼女の」ではない!)

fe =肯定を表す動詞前虚詞
mi =と同じ,北部方言

go =かなり
neu =又は
pa =どれ
pan =~の時
pur =とても
pwy =誰
rhy =~すぎる


 

以下の2つは、後に来た単語が
ll- 又は rh-
で始まる場合、軟音化を起こさない


mor =とても(+形容詞)
yn =~の中に(+名詞 or 形容詞)


 

兄貴「軟音化を起こす単語を全部覚える必要があるの?」

ワイ「おまえは何を言っているんだ?(当たり前だろ)」

 

例えば、肯定を表す動詞前虚詞 fe の後に来た動詞は軟音化を引き起こす

Fe dales i
私は、支払った

 

元の動詞の形はtalu(支払う)

話し言葉・点過去・一人称・単数へ活用させると
tales(私は支払った)

その動詞の前に、肯定を表す動詞前虚詞 fe を置いた場合…
talesの語頭が t→d へ変化する(軟音化)

Fe dales i
私は、支払った

 

こういう風に、ある単語の後に軟音化を引き起こすかどうかをいちいち気にしないといけないのがウェールズ語の特徴
めんどうくさい

屈折構文で使われる、文の先頭の動詞

先ほどの例文を使いまわすゾ~

Fe dales i
私は、支払った

は、肯定を表す。

疑問文にする場合、先頭の動詞前虚詞 fe を取り除くッ!
ただし動詞、テメーは軟音化したままだッ!

Dales i?
私は支払いましたか?

 

屈折構文疑問形にする場合、文頭に来た動詞が軟音化する。
(動詞前虚詞 fe が省略されている訳ではない)

名詞から「時間の副詞」を作る場合

「1年」を表す名詞blwyddyn

 

この名詞を「1年前に~」副詞へと変化させる場合・・・
blwyddyn語頭b→f へと軟音化する。

flwyddyn yn ôl
一年前に~

 

他にも名詞「月曜日」dydd Llun
これを「月曜日に」副詞にするとddydd Llun

語頭 d→dd軟音化している。

2語以上から成る合成語を作る時の、後ろの単語

日本語で言うと

「手(Te)」+「紙(KaMi)」→「手紙(TeGaMi)」

 

ウェールズ語で例を挙げる。

例えば「首都」prifddinasと書く。

そのprifddinas2語から成る合成語

 

こ↑こ↓  2つの単語から来てるゾ~
prif(主な)+dinas(市)

 

合成語を作る場合、後ろの単語の語頭が軟音化する
要するに、単語のケツにぶち込む子音の音が変わる。

 

この場合は、dinas(市)語頭がが d→dd へと軟音化して

ddinas

を  prif(主な) のケツへぶち込んでいる。

これがprifddinas(首都)

 

あっ、そうだ(唐突)
「接頭詞」を単語の頭へヌプッ…した場合も軟音化するゾ~

「接頭詞」っていうのは、英語で言うとみたいなモン


re-(再び),  un-(否定),  anti-(反~)


 

「接頭詞」を使ったウェールズ語単語も紹介するゾ~


ym-(~自身)+golchi(洗う)→ymolchi(入浴する) [g→なし]

af-(否定)+llwyddiannus(成功の)→aflwyddiannus(不成功の) [ll→l]

di-(~無しで)+gwaith(仕事)→diwaith(失業者) [g→なし]

gwrth-(反~)+taro(打つ)→gwrthdaro(衝突、対立) [t→d]


 

軟音化を起こすケースは、これで終わり!閉廷!…以上!皆解散!

軟音化が起こるケースの復習

大体6つある


・概念上の主語の後に来た単語

・女性名詞・単数形の後に来た単語

・特定の単語の後

・屈折構文で使われる、文の先頭の動詞

・名詞から「時間の副詞」を作る場合

・2語以上から成る合成語を作る時の、後ろの単語


biim兄貴で復習しよう!(提案

復習ハイ、よーいスタート(棒読み)

ウェールズ語には、biim兄貴の名前を使ったbûm(ビーム)がよく出てくる

Fe fûm i yma ddeng mlynedd yn ôl
私は10年前に、ここに居ました

 

の例文の場合、2つの理由で軟音化を起こしているゾ~
他にも1か所で「鼻音化」が生じているけど、気にしない


・特定の単語の後

・名詞から「時間の副詞」を作る場合


 

まず1つ目の「特定の単語の後」について説明するゾ~
肯定を表す動詞前虚詞 Fe の後に来た動詞は 軟☆音☆化

biim兄貴こと bûm(ビーム)が fûm(ヴィーム)へと変化するゾ~
(b→f)

 

2つ目の「時間の副詞」ddeng mlynedd yn ôl
「10年前に~」という副詞的な意味だゾ~

もし「10年」という風に名詞で表す場合deng mlynedd
だから、d→dd軟☆音☆化 させる必要があったんですね。

 

こんな風に、語頭の音変化を気にするのがウェールズ語
これだからウェールズ語は…(不満

他の音変化

2つあるヨ


・鼻音化(びおんか)
・帯気音化(たいきおんか)


ウェールズ語講座その25~「私の~」で学ぶ鼻音化

ウェールズ語講座その26~帯気音化の紹介

ただし、残り2つの音変化を起こすケースは軟音化よりも圧倒的…減少ッ!

「鼻音化」についても整理してみた

ウェールズ語で鼻音化(びおんか)が起こるケースを整理してみた