黒田龍之介先生の本の中で
「星の王子様」の最初の段落をいろいろな言語で朗読するシーンがある。
私はウェールズ語を学んでいるので、ウェールズ語で朗読してみた。
元ネタ
「ぼくたちの外国語学部」
ちなみに、「黒田龍之助」は語学マニアの間では有名な人。
「星の王子様」をいろいろな言語で朗読
その本の228ページ~ の内容をまとめると、以下になる。
・「星の王子様」の初めの段落を、いろいろな言語で朗読する。
・外国語大学で専攻している言語、あるいは熱心に学んでいる言語を用いる
・本書で出てきた言語は以下
1.インドネシア語
2.ドイツ語
3.ハンガリー語
4.ポーランド語
5.中国語
6.ロシア語
7.ベラルーシ語
私が熱心に学んでいる言語はウェールズ語
ウェールズ語を熱心に学んでいるので・・・
「星の王子様」の初めの段落をウェールズ語で朗読してみた。
そもそもウェールズ語って何?
以下を読んで、どうぞ
ウェールズ語で朗読してみた
用いた文献
Y Tywysog Bach. Cymraeg: Le Petit Prince … – Amazon
「星の王子様」の初めの段落
最初のページは以下のような感じ。
初めの段落だけ抜き出すと以下になる。
Un tro, pan oeddwn i’n chwech oed,
fe welais i lun godidog mewn llyfr am y fforest wyryfol,
llyfr o’r enw “Hanesion Byw”.
Llun o neidr boa yn llyncu anifail gwyllt oedd e.
yma gopi o’r darlun:
参考までに、日本語訳を以下に挙げる。
六つのとき、原始林のことを書いた「ほんとうにあった話」
という、本の中で、すばらしい絵を見たことがあります。
それは、一ぴきのけものを、のみこもうとしている、
ウワバミの絵でした。
これが、その絵のうつしです。
(内藤濯訳、岩波少年文庫)
ウェールズ語で朗読してみる
カタカナ読みを付けた。
Un tro, pan oeddwn i’n chwech oed,
イン トロ、パン オエズゥニン フゥェフ オエド、
fe welais i lun godidog mewn llyfr am y fforest wyryfol,
ヴェ ウェライスィ リン ゴディドグ メゥン シヴル アム ア フォレスト ウィラヴォル
llyfr o’r enw “Hanesion Byw”.
シヴル オル エヌゥ ”ハネション ビゥ”
Llun o neidr boa yn llyncu anifail gwyllt oedd e.
シン オ ネイドル ボア アン サンキ アニヴァイル グィスト オエズ エ
yma gopi o’r darlun:
アマ ゴピ オル ダルリン:
時々、カタカナ読みを馬鹿にする人がいるのだが・・・
そういう人は、ウェールズ語を「カタカナ読み無し」で読めるんでしょうかね?
カタカナ読みが無かったら、ほとんどの日本人は
llyfr(本)
を「リフル」と読むだろうね。
(ウェールズ語だと「シヴル」と読む)
ウェールズ語の発音
文字と発音の対応
気を付ける発音を簡単に整理した。
・「u」=「イ」 (“ウ”ではない!)
・「dd」=「ズ」(thisの”th”)
・「ch」=「フ」(kの音を伸ばす)
・「f」=「ヴ」 (英語の”v”)
・「w」=「ウ」(母音)
・「ll」=「ス」(“L”の舌の形で「ス」)
・「y」=「ア」又は「イ」(※母音です)
・「ff」=「フ」(英語の”f”)
「u」=「イ」
un=イン
「dd」=「ズ」
oeddwn=オエズゥン
「ch」=「フ」
chwech=フゥェフ
「f」=「ヴ」
fe=ヴェ
「w」=「ウ」
welais=ウェライス
「ll」=「ス」
llyfr=シヴル
「y」=「ア」又は「イ」
「イ」と読むケース(最後の音節)
llyfr=シヴル
「ア」と読むケース(それ以外の音節)
wyryfol=ウィラヴォル
「ff」=「フ」
fforest=フォレスト
ウェールズ語の解読
日本語訳は、ウェールズ語に合わせて少し修正した。
文法はさら~っと軽く解説する。
ウェールズ語の文法って、こんな感じなんだな~
と思ってもらえれば嬉しい。
六つのとき~
Un tro, pan oeddwn i’n chwech oed,
イン トロ、パン オエズゥニン フゥェフ オエド、
六つのとき、
直訳:
ある時、私が6歳だった時~
この文は「bod構文」になっている。
(英語風に言うと「be動詞+一般動詞」を使う文章)
「bod構文」の詳細は、以下を読んでどうぞ。
「bod」に当たるのが「oeddwn」(過去形)
英語だと「I was」
原始林のことを書いた~
fe welais i lun godidog mewn llyfr am y fforest wyryfol,
ヴェ ウェライスィ リン ゴディドグ メゥン シヴル アム ア フォレスト ウィラヴォル
原始林のことを書いた、すばらしい絵を見たことがあります。
直訳:
原始の森について(書かれた)本の中にある、すばらしい絵を、私は見たことがある。
これは、今までしつこく言ってきた「bod構文」・・・ではない!
「bod(=be動詞)」を使わない代わりに、
一般動詞そのものを変化させる構文。
ウェールズ語文法では「屈折構文」と呼ぶ
ここでは「welais(私は見た)」が一般動詞
「welais」は、元の形「gweld」の形が変化したもの。
(これを「屈折変化」と呼ぶ)
「屈折構文」=「ヨーロッパ言語にありがちな動詞の特徴」
だと思ってくれ
「ほんとうにあった話」という本
llyfr o’r enw “Hanesion Byw”.
シヴル オル エヌゥ ”ハネション ビゥ”
「ほんとうにあった話」という本
直訳:
「人生の歴史」という、その名前から(来た)本
“Hanesion Byw”を前から順番に訳すると
「歴史たち」+「人生(の)」
※Hanesionは複数形
ウェールズ語で「~の」を表す場合、説明する単語 (ここでは“Byw(=人生)”) を後ろに置く決まりになっている。
ウワバミの絵でした
Llun o neidr boa yn llyncu anifail gwyllt oedd e.
シン オ ネイドル ボア アン サンキ アニヴァイル グィスト オエズ エ
それは、一ぴきのけものを、のみこもうとしている、ウワバミの絵でした。
直訳:
それは、ボア(という名)のヘビが、ある野生の動物をのみこんでいる(ところから来た)絵だった
全体で見ると、述語を強調する「bod構文」になっている。
(ここでは「絵」を強調している)
主語:
e(それ)
be動詞(=bod動詞):
oedd(~だった)
述語:(強調する内容)
Llun(絵) + o(~から) + 「~から」の説明内容
基本的に、ウェールズ語は
oedd e + 述語
の語順になる。
(常に「bod動詞」が一番最初に来る)
ただし、述語を強調したい場合は「bod動詞」の前に置くだけでOK!
(英語みたいに「it is … that ~」という面倒な事をしなくて済む)
その絵のうつしです
yma gopi o’r darlun:
アマ ゴピ オル ダルリン:
これが、その絵のうつしです。
直訳:
これは、その絵をコピーしています
gopi=コピー(名詞)
↑は、元の形「copi」が軟音化(なんおんか)している。
「~は…です」の文なので、
「…です」の部分の「…」の名詞を軟音化させる必要がある。
ウェールズ語文法的に言うと「叙述のynの軟音化」
(この文では「叙述のyn」が省略されていると考える)
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