「星の王子さま」に出てくる「うぬぼれ屋」のウェールズ語版を読んでみた

「うぬぼれ屋」とは、「星の王子さま」に出てくる承認欲求が高い大人のキャラクターである。
ネットに居るお前ら

「星の王子さま」の日本語訳と比べながら読んでみた。

ウェールズ語を知らない人には、さっぱり分からんだろうけど許して♡




「星の王子さま」の日本語・ウェールズ語訳

日本語版

以下サイトで、無料で読める。

The Little Prince 研究社

 

一応、著作権は切れているので、合法らしい
(作者の死後50年で、著作権が消滅)

ウェールズ語版

Y Tywysog Bach cymraeg
で検索してみたけど、無料で読めるサイトは無いみたい。

 

その代わりに、amazon等のネット通販だらけ・・・

amazonは

Y Tywysog Bach. Cymraeg: Le Petit Prince, Walisisch Paperback

登場人物のウェールズ語版

うぬぼれ屋

承認欲求が高い「うぬぼれ屋」は、ウェールズ語だと

Dyn balch(ディン バルフ)
直訳すると「誇り高き男」

星の王子さま

フランス語だと「Le Petit Prince(ル プティ プランス)」で有名な子供は、ウェールズ語だと
Tywysog bach(タウィソグ バフ)

直訳すると「小さな王子」

Tywysog(タウィソグ)が、王子の意味。

 

ちなみにTywysoges(タウィソゲス)だと、「女の王子」

つまり「プリンセス」の意味になる。

「プリンセス・オブ・ウェールズ」のウェールズ語を文法的に説明してみた

ウェールズ語会話文

うぬぼれ屋

Dyn balch oedd yn byw ar yr ail blaned.
2番目の星にはうぬぼれ屋が住んでいた。

文頭に、名詞の「うぬぼれ屋」Dyn balchが先に来ているので、強調文になる。

【ウェールズ語】BOD動詞の一種であるsy(スィ)やsydd(スィズ)は「強調文」で使う

 

“A! A! Dyma edmygydd yn dod i ‘ngweld i,”
「ああ! 私を称える者がやってきたな!」

‘ngweld i=fy ngweld i
同士の目的語が、人称代名詞「私」になる場合、動詞の両端にfy ~ iを挟む

 

gwaeddodd y dyn balch o bell cyn gynted ag y gwelodd y tywysog bach.
と、王子さまを見かけると遠くから大声で言った。

cyn gynted (ag)=~するとすぐに…

 

Oherwydd i bobl falch mae pob person arall yn edmygydd.
うぬぼれ屋にとって、自分以外はみんな自分を賞賛する存在なのだ。

Oherwydd(なぜならば~)+i bobl falch(うぬぼれ屋にとって)
の後に、BOD構文(ここではmae)が来ていると考える。

星の王子さま

“Dydd da,” meddai’r tywysog bach.
「こんにちは」と、王子さまが言った。

meddai(彼は言う)は「メザイ」ではなく「メゼ」と発音する

 

“Dyna het ddoniol sydd gennych chi.”
「変わった帽子ですね」

ここで言うsydd(スィズ)は「強調のBOD」ではなく「関係代名詞」だと思う。
先行詞はhet ddoniol(面白い帽子)

het ddoniol sydd gennych chi
の部分を直訳すると「アナタが持っているところの、面白い帽子」

うぬぼれ屋

“Cydnabod yw gwaith hon,” atebodd y dyn balch.
「これはあいさつ用の帽子だ」と、うぬぼれ屋が答えた。

Cydnabod yw gwaith honは「この仕事は、承認(認知)である」
ここで言うgwaith(仕事)は、帽子を持ち上げる行為だと思われる。

 

“Cydnabod cymeradwyaeth.”
喝采をあびたときに、あいさつとして帽子を持ち上げるんだ。

直訳すると「受け入れられる承認(認知)」

 

“Yn anffodus does neb byth yn dod y ffordd yma.”
「でも、残念なことに、これまで誰も通りかかったことがない」

does neb bythで「今まで、誰も居ない」
bythは、ここでは「never」のニュアンス




星の王子さま

“Wel, wel,” meddai’r tywysog bach, heb ddeall dim.
「そうなの?」と、王子さまは言ったが、うぬぼれ屋が何を言っているのかわからなかった。

~, heb ddeall dimは「理解すること無しで~」
hebは「~無しで」を意味する前置詞

うぬぼれ屋

“Cura dy ddwylo yn erbyn ei gilydd,”
「拍手しなさい。両手をたたいて」

ei gilyddで「彼同士で~」
ここで言う「彼」はddwylo(手)を指している

 

awgrymodd y dyn balch
と、うぬぼれ屋が指示した。

awgrymoddの語尾-oddを見れば、動詞の点過去・3人称・単数である事が分かる。

星の王子さま

Curodd y tywysog bach ei ddwylo yn erbyn ei gilydd.

王子さまは拍手をした。

「叩く」を意味するCuroddの語尾が-oddになっているので、動詞の点過去・3人称・単数

うぬぼれ屋

Cododd y dyn balch ei het i’w gydnabod yn ddiymhongar.
うぬぼれ屋は帽子を持ち上げて、控えめにあいさつした。

ei hetは「彼の帽子を」という目的語として使われている。

「彼の~を」を表す時はeiを使う。

星の王子さま

“Mae hyn yn fwy difyr na’r ymweliad â’r brenin,”
「これは王様を訪ねるよりおもしろいな」

naは、比較の文で使われる「~よりも」の意味。

 

meddyliodd y tywysog bach,
と、王子さまは思った。

meddylioddは「彼は考えた」と言う意味の動詞。

meddaiの点過去・3人称・単数。
語尾が-oddになっていますね。

 

ac ailddechreuodd guro’i ddwylo.
そこでもう一度拍手をした。

ailddechreuoddは「彼は、再び始めた」の意味

ail(再び~)+ddechreuodd(彼は始めた)
に分解できる。

うぬぼれ屋

Ailddechreuodd y dyn balch godi ei het i’w gydnabod.
うぬぼれ屋はもう一度帽子を持ち上げてあいさつした。

i’wi eiの短縮形。
~i’w gydnabod.で「そして、彼(=星の王子さま)を認識した」の意味になる。

動詞の目的語が、人称代名詞になる時はei + 動詞 + (e)
最後の(e)は省略可能。

星の王子さま

Ar ôl pum munud blinodd y tywysog bach ar undonedd y chwarae.
これを5分も繰り返すと、王子さまはこの単調なゲームに飽きてきた。

blinodd y tywysog bach ar undonedd y chwaraeにあるarは、身体や感情の状態を表す前置詞
直訳すると「王子様は、単調な遊び状態に疲れた」

 

“Beth os cwympith yr het?” gofynnodd.
「帽子を降ろすには、どうすればいいの?」王子さまはそうたずねたが、~

cwympithは「彼は、落とす」を意味する。
cwympoの未来形・3人称・単数

語末の語尾-ithが未来形の目印。
-ithなので、北部ウェールズ語の表現であることが分かる。

※南の場合は-iff

うぬぼれ屋

Ond chlywodd y dyn balch ddim ohono fe.
うぬぼれ屋には聞こえていないようだった。

ohono feは、前置詞o(~から)+人称代名詞fe

ウェールズ語は、前置詞も人称変化するのよん。

【ウェールズ語】前置詞の後に人称代名詞が来たら「前置詞」が人称変化する

 

Dydy popl falch byth yn clywed dim byd ond clod.
うぬぼれた人たちというのは、自分を賞賛する言葉しか耳に入らないのだ。

dim byd (ond)=「何も~無い」

 

“Wyt ti’n fy edmygu i’n fawr mewn gwirionedd?”
「君は本当に私を賞賛しているのかな?」

mewn gwirioneddは、「真実の中で~」の意味

 

gofynnodd i’r tywysog bach.
と、うぬぼれ屋は王子さまにたずねた。

i’ri + yr + 名詞(~へ)

星の王子さま

“Beth yw edmygu?”
「賞賛ってどういう意味?」

ywはBOD動詞の現在形・3人称・単数の古い形。
丁寧に言う場合はydyw(アディウ)を使う。

うぬぼれ屋

“Edmygu yw cydnabod mai fi yw’r dyn harddaf, y mwyaf trwsiadus ei wisg, y cyfoethocaf, a’r mwyaf deallus ar y blaned.”
「賞賛というのは、私がこの星でいちばんハンサムで、いちばん良い服を着ていて、いちばん金持ちで、いちばん頭がいいと思うことだよ」

maiは、この後に続く文が「強調構文」であることを示すマーク。
maiの次に来たfi(私)を強調している。

星の王子さま

“Ond dim ond ti sydd ar dy blaned di.”
「でも、この星にはあなたしかいないでしょ!」

syddは、関係代名詞。
先行詞はti(君)

うぬぼれ屋

“Gwna’r gymwynas yma â fi.”
「お願いだ。」

最初のGwnaは、Gwneud(~する)の命令形・2人称・単数

全体を直訳すると「ここで私に好意を作れ!」

 

“Edmyga fi er hynny.”
「それでも私を賞賛してくれ」

erは「~にもかかわらず」を意味する前置詞
er hynnyで「それにもかかわらず」

星の王子さま

“Rwy yn dy edmygu di,” meddai’r tywysog bach,
「賞賛するよ」と王子さまは言った。

dy edmygu di=「君を称賛する」
動詞の目的語が、人称代名詞「君」になるのでdy + 動詞 + di

「愛してる♡」はフランス語だとJe t’aime(ジュテーム)。なお、ウェールズ語は

 

gan godi ei ysgwyddau,
ちょっと肩をすくめて。

直訳すると「彼の肩を上げる状態と共に~」

 

“ond sut gall hynny fod o les i ti?”
「でも、賞賛されることがなんでそんなにおもしろいの?」

fod o lesは「役に立つ事」の意味
les(レス)は、lles(セス)が軟音化した形
(軟変異とも言う)

ウェールズ語講座その24~女性名詞で学ぶ軟音化

Ac aeth y tywysog bach ymaith.
そうして王子さまはその星を立ち去った。

aethmynd(行く)の点過去・3人称・単数
英語だと「went」みたいな感じでしょうか。

myndの過去形は、不規則なので覚えるしかない。

 

“Mae pobl mewn oed yn wirioneddol ryfedd,”
「大人って本当に変だなあ」

pobl mewn oedは「歳の中の人」
つまり「大人」

 

meddai’n syml wrtho fe’i hunan yn ystod ei daith.
と、旅を続けながら、王子さまはつぶやいた。

wrtho fe’i hunanは「彼自身」の意味

前置詞wrth(~のそばに)が3人称・単数・男性形へ変化したのがwrtho

前置詞の後に人称代名詞が来た場合、前置詞が人称変化する
(変化しないこともある)

「うぬぼれ屋」のウェールズ語を読んだ感想

・ウェールズ語の復習になった

・ウェールズ語の勉強になった

・英語や中国語、韓国語と違ってウェールズ語ができる日本人はほとんど居ないから、「これ違うぞ」と突っ込まれる可能性はほぼゼロwww

・知識の独占状態www

なんか感じの悪いヤツだな