ヘブライ語起源のイディッシュ語単語は、発音がコロコロ変わる

イディッシュ語の中には、ヘブライ語の単語が混ざっている。
その多くはイディッシュ語風の発音になっている。

ヘブライ語学習者の視点で,注意すべき読み方を整理してみた




前回の記事

ヘブライ語の視点で、イディッシュ語の「文字」の読み方を整理してみた。

ヘブライ語学習者がイディッシュ語の文字と発音を学ぶとこうなる

本記事では、イディッシュ語の「単語」の読み方を分析してみる。

ヘブライ語から来たイディッシュ語単語の音変化

結論:7パターンある

ざっと確認した限り、以下のケースに分類できると思う。

※ヘブライ語→イディッシュ語


1.音変化なし
2.o→oy
3.e→ey
4.a→o
5.a→e
6.t→s
7.その他


 

音の変化としては、大体6パターンある。

 

もっとガチで分析したら、他のパターンがあるかもしれないし
例外が出てくるかもしれない。

表で整理してみた

 

1つの単語で複数の音変化が起こるケースもある

例を以下に挙げる。

 

以降は、
ヘブライ語 vs イディッシュ語
の順番に書く。

דרוםדָרוֹם
(darom – dorem) 南

補足説明

イディッシュ語の語学書にある単語リストには、英語アルファベットの読み仮名が付いている。
それを元に、ヘブライ語の発音と比較すると大体6パターンに分類できると思う。

 

もっと細かく見ると・・・
ヘブライ語の「半母音e」がイディッシュ語では消滅したり母音eに変わったりする単語もあるけど、
ここら辺まで説明すると難しくなるので、省いた。

音変化のパターンを紹介

1.音変化なし

ヘブライ語学習者にとっては発音しやすいイディッシュ語単語

אַזאָז
(az)~の時

 

בגדבֶּגֶד
(beged)服

 

חוץחוּץ
(khuts)~の外に

 

יםיָם
(yam)海

2.o→oy

母音を示す文字וが「oy」の発音になるケース
イディッシュ語だとױと表記する

 

יוסףיוֹסֵף
(Yosef – Yoysef) ヨセフ[人名]

 

יושבֿיוֹשֵׁב
(yoshev – yoyshev) 住人

 

חודשחֹדֶשׁ
(khodesh – khoydesh) 月,month

 

תּורהתוֹרָה
(tora – toyre)教え、トーラー

3.e→ey

מלךמֶלֶךְ
(melekh – meylekh)王

 

ספֿרסֵפֶר
(sefer – seyfer)宗教書、本

 

תּיכּףתֵּכֶף
(tekhef – teykef)ただちに

 

פּסחפֶּסַח
(pesakh – peysekh)過越の祭(すぎこしのまつり)




4.a→o

דודדָּוִד
(David – Dovid)ダビデ[人名]

 

ירושליםיְרוּשָׁלַיִם
(Yerushalaim – Yerusholaym)エルサレム[地名]

 

ישׂראליִשְׂרָאֵל
(Yisrael – Yisroel)イスラエル

 

סרהשָׂרָה
(Sara – Sore)サラ[人名]

5.a→e

単語の最後にהが来るイディッシュ語単語は、大抵は母音がa→eに変わる。

ヘブライ語の文字と音の結びつきを覚えよう~ ה(H)

מדינהמְדִינָה
(medina – medine)国家

 

מלחמהמִלחָמָה
(milkhama – milkhome)戦争

 

כּלהכַּלָה
(kala – kale)花嫁

 

一部の単語は、最後にהが来ても母音「ア」になるケースもある
חיפֿהחֵיפָה
(Kheyfa – Khayfa) ハイファ[地名]

 

単語の最後にהがなくても「a→e」で音変化するケースがある。

מידברמִדְבָּר
(midbar – midber)砂漠

 

ヘブライ語の「潜入パタハ」母音「a」が挿入される単語は、イディッシュ語の場合は母音「e」に変わる

משיחמָשִׁיחַ
(mashiakh – meshiekh)油を注がれた者、メシア

 

「潜入パタハ」って何?
ってなった兄貴は以下を読んで、どうぞ。

語末に母音「ア」が入り込む「潜入パタハ」の紹介

6.t→s

ヘブライ語のת(t)をそのままイディッシュ語で表記すると「s」に変わる

מתמֵת
(met – mes)死者

 

אמתאֱמֶת
(emet – emes)真実

 

שבתשַׁבָּת
(shabat – shabes)安息日

 

ヘブライ語ではת(t)だけど、
イディッシュ語では、ダゲシュの点を付けてתּと表記した単語もある。

その場合、発音は「t」のまま(変化なし)

עבֿריתּעִבְרִית
(ivrit) 現代ヘブライ語

7.その他

少数だけど、以下の音変化のケースもある。


o→e
u→e
i→e
kh→k


 

o→eのケース
שלוםשָׁלוֹם
(shalom – sholem)平和

エッフェル塔の「平和の壁」に書かれているヘブライ語(とアラビア語)

u→eのケース
לימודלִמּוּד
(limud – limed)勉強

 

i→eのケース
תּמידתָּמִיד
(tamid – tomed)常に

 

kh→kのケース

ヘブライ語の כ(kh) が、イディッシュ語では כּ(k)に変化するケース
すでに紹介した単語だけど、もう一度

תּיכּףתֵּכֶף
(tekhef – teykef)ただちに

音変化を整理して分かった事

発音変化のルールは無い!

イディッシュ語の語学書を見ても

「ヘブライ語由来の単語の音変化ルール」

みたいなマニアックな解説が無い。

 

ぜいぜい
「ヘブライ語由来の単語は、複数形が~になる」
みたいな解説しかない。

 

ヘブライ語の知識がある私としては

ヘブライ語由来の単語がイディッシュ語へ借用された時、どんな音変化ルールがあるのか?

というマニアックな内容が知りたい!

 

なので、イディッシュ語の単語リストからヘブライ語起源の単語だけ抜き出して
自分なりに音変化のルールを整理してみた。

 

その結果分かった事は


音変化のルールは無いよ!


 

つまり、イディッシュ語の単語ごとに発音を覚えるしかない!

発音が全然違う!という訳じゃない

ヘブライ語の「三語源」の考え方は、イディッシュ語にも引き継がれている。

ヘブライ語における三語源を説明してみた

 

なので、子音の変化は少ない。
あったとしても、ほとんどは t→s

他に kh→k のケースもあるけど、少ない。

 

その代わりに、母音の変化が多いんですね?分かります?

 

けっきょくは、暗記なのね

ハイハイ、分かってますよ。

 

ヘブライ語由来のイディッシュ語単語でも、ヘブライ語の知識に頼らずイチから覚えなさい!って事ね。

あー、めんどくせー。

 

幸い、イディッシュ語は英語やドイツ語に近い要素が多い。
(イディッシュ語は英語に近いグループに属する言語)

 

私の場合は、英語とついでにヘブライ語の知識でイディッシュ語を学べるというアドバンテージがある。

ほいほいイディッシュ語を学んでいきますか。

英語の知識で読めるイディッシュ語単語

英語の知識で読めるイディッシュ語単語~母音と簡単な子音